2015 Fiscal Year Research-status Report
モット転移近傍におけるフラーレン超伝導体の電気輸送特性
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15K17690
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平郡 諭 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (70611648)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フラーレン / 金属絶縁体転移 / 電気輸送特性 / 超伝導 / 分子性固体 / モット転移 / 電子相関 / オンサイトクーロン反発 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気輸送特性は物性を明らかにする為に最も基礎的な要素であり、不可欠である。よく知られたC60超伝導体ではあるが、極めて強い嫌気性を示す粉体試料であるためその電気輸送特性の研究は、技術的困難さから行われてこなかった。 またC60超伝導体では格子定数の増加に伴いTCが上昇することが知られており、BCS超伝導であることの証拠として考えられてきた。近年単離されたCs3C60のように格子歪みを伴わず理想的に格子を拡張していくとTCはピークを持ったドーム型の相図を示し、最も格子定数が拡張された常圧下では超伝導が消失しモット絶縁体となることが報告されている。これはフラーレン超伝導体が従来のBCS超伝導体であるという認識を再考させる結果である。 本研究では、モット転移近傍における強い電子相関の効果を明らかにすることを目的に、圧力下での電気輸送特性の研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の固相反応で得られるfcc C60超伝導体の中で最も格子定数が拡張された相であるRb0.35Cs2.65C60の純良な試料の合成に成功した。印加圧力を変化させながら電気抵抗率の温度依存性を詳細に調べた結果、金属-絶縁体転移に起因すると考えられる電気抵抗率のピークが格子の圧縮と共に系統的に高温側へシフトした。物理的圧力によりモット絶縁体から常伝導体へと制御可能であることを明らかにした。さらにモット絶縁体状態での熱活性的振る舞いからオンサイトクーロン斥力を見積もり、モット絶縁体領域に近づくにしたがって急激に上昇することを見出した。様々なRb置換相における電気抵抗率の測定により、これまでに磁化率の測定から提案されていた金属絶縁体境界がより高温側に位置することを明らかにした。これらの研究成果によりC60化合物における本質的な電子状態相図を提案する。
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Strategy for Future Research Activity |
格子が拡張されたモット転移近傍における相では、モット転移した後にC60分子の歪みが関係したヤンテラー金属と呼ばれる状態が出現することが報告されている。本研究で得られた電気輸送特性の温度依存性からはモット転移近傍に出現する異常金属相的振る舞いと考えられる一方で、分子歪みを伴った絶縁体から金属へ電子状態が変化する間の中間相としても見なすことが出来る。今後は当該ヤンテラー金属相についても注目したい。 またfcc C60化合物の金属相について幅広く圧力下の電気輸送特性を調べることで、C60化合物における電子相関の効果を系統的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
基金分を有効活用のため繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と合わせて、本研究遂行に必要な消耗品の購入に充てる。
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