2016 Fiscal Year Research-status Report
5d電子系におけるジャロシンスキー・守谷相互作用の微視的模型からの導出とその応用
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15K17694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 弘泰 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40596607)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジャロシンスキー守谷相互作用 / スピン軌道相互作用 / 軌道磁化率 / 励起子絶縁体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)磁性体と大きなスピン軌道相互作用を保持した5d金属との界面におけるジャロシンスキー守谷相互作用の導出:昨年度の研究実績の概要で示した結果が、J. Phys. Soc. Jpn. の2016年11月号に掲載された。 2)パイエルス位相の補正を含めた軌道磁化率: 固体中の軌道磁化率を求める方法として、グリーン関数を用いた方法と、パイエルス位相による方法とが知られている。しかし、パイエルス位相による方法では、その導出過程に近似が入るため、結果として、グリーン関数を用いて導出された軌道磁化率とは異なることが知られていた。この違いの起源を明らかにするため、パイエルス位相導出の際に、近似を行うことなく計算を進めて軌道磁化率を導出し、グリーン関数の方法から導出された軌道磁化率と一致することを明らかにした。(J. Phys. Soc. Jpn. の2016年7月号に掲載された。) 3)励起子絶縁体の磁化率: 近年、Ta2NiSe5 は励起子絶縁体の候補物質として注目を集めている。Ta2NiSe5のバンド構造は、Taの5d軌道の伝導体とNiの3d軌道の価電子帯からなる半導体であり、これらの軌道の役割と励起子絶縁体の関係性に興味を持たれている。さらに、Ta2NiSe5 の磁化率の温度変化は励起子絶縁体の軌道磁性に由来すると考えられていたが、最近まで理論的に未解決だった。そこで、軌道磁化率の温度依存性の起源をを明らかにするため、磁場下で電子とホールが励起子絶縁体を構成する二軌道模型を構築し、平均場近似を用いて解析した。また、磁場下での問題を扱うために、2)で明らかにした方法を用い、軌道磁化率を導出した。解析の結果、励起子絶縁体転移に伴い、軌道磁化率が負に大きくなることが分かった。(J. Phys. Soc. Jpn. の2016年9月号に掲載された。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画には含まれていなかった「軌道磁化率の理論」や「励起子絶縁体の理論」を行うことができた。これらの理論により、5d電子系における軌道磁場応答理論の基礎理論の一部を確立できた。本研究課題は、当初予定していた研究計画をより広く深く理解する方向に進んでおり、研究計画は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に掲げた、「5d電子系におけるジャロシンスキー守谷相互作用の導出」に関して、初年度、次年度の研究を通して具体的な目途が立ってきた。また、次年度において、軌道磁化率の理論を展開することができた。この理論を本研究計画が着目している系に適用し、5d電子系での軌道磁場応答の理論も推進する。
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Causes of Carryover |
当初は海外出張を予定していたが、急遽キャンセルになったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、海外や国内での出張旅費に用いる予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] (実践的な) 磁性入門2016
Author(s)
松浦弘泰
Organizer
キラル若手の学校
Place of Presentation
大阪府立大学i-siteなんば(大阪府大阪市)
Year and Date
2016-12-12 – 2016-12-12
Invited
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