2016 Fiscal Year Research-status Report
磁気空間対称性が保護する軌道秩序相の隠れた電子状態特性の理論研究
Project/Area Number |
15K17713
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 通人 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (10596547)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 反強磁性 / 異常ホール効果 / トポロジー / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は反強磁性秩序相の対称性と電子構造トポロジーの研究に関して、反強磁性秩序下で発現する異常ホール効果の研究に取り組み、国内外の研究会・国際会議で研究発表に加え、得られた成果をまとめた論文を執筆した。論文はPhysical Review B(M.-T. Suzuki, T. Koretsune, M. Ochi, and R. Arita, Phys. Rev. B 95, 094406 (2017))に出版され、査読者と編集者から高い評価を受けた論文としてEditors' Suggestionに選定されている。本研究の成果として(1)異常ホール効果を発現する電子構造のトポロジーが持つ性質を明らかにし、異常ホール効果が発現する条件を明らかにした。(2)一般の多くの反強磁性体にも、強磁性体の磁化と同じように、磁気構造を特徴づける巨視的な量(クラスター多極子)が存在することを示した。(3)異常ホール効果を誘起する反強磁性構造が、強磁性体の磁化と同じ対称性を持つ、クラスター八極子という量で特徴づけられることを明らかにした。(4)第一原理計算によって強磁性体と反強磁性体の異常ホール伝導度を計算し、クラスター多極子を用いることで強磁性体と反強磁性体の異常ホール効果が統一的に理解できることを示した。 また、アイオワ州立大学の角度分解高電子分光実験グループとの共同研究により、MoTe2のトポロジーで保護される電子構造の縮退点(ワイル点)に関する研究を実施し、第一原理計算により、フェルミ面が点接触して形成されるType II型のワイル点の存在を示すことに成功している。本論文は初のType II型ワイル点の例として研究成果が高く評価され、研究論文がNature Materials誌に出版されている(Nat. Mater. 15, 1155 (2016))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反強磁性体においても強磁性体の磁化に類する巨視的な秩序パラメータが存在することを示し、一般の磁気秩序に伴う磁気対称性の破れを測る量としてクラスター多極子モーメントという秩序パラメータセットを考案し、さらに、反強磁性秩序化の異常ホール効果の発現機構をクラスター多極子の枠組みで説明することに成功している。これらの研究成果はすでに国内外の多くの研究会・国際会議で発表され、既に研究論文の出版も終えている。本研究成果は本研究計画の中心的な課題である群論手法に基づく磁気空間対称性に由来した物性の理解という目標達成に大きく貢献するものであり、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
考案したクラスター多極子理論は一般の磁気秩序に伴う巨視的な対称性の破れを測る秩序パラメータであるため、磁気対称性の破れに伴って発現する様々な物理現象との相関が期待される。今後、クラスター多極子理論を適用した応用研究として、電気磁気効果やスピンホール効果の発現メカニズム解明に向けた研究に取り組み、クラスター多極子と非対角応答現象に関する、より包括的な知見の獲得を目指す。
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Causes of Carryover |
使用計画による使用額と実際の購入額の差額による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度における研究資料の購入に使用する。
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[Journal Article] Spectroscopic evidence for type II Weyl semimetal state in MoTe22016
Author(s)
Lunan Huang, Timothy M. McCormick, Masayuki Ochi, Zhiying Zhao, Michi-To Suzuki, Ryotaro Arita, Yun Wu, Daixiang Mou, Huibo Cao, Jiaqiang Yan, Nandini Trivedi, Adam Kaminski
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Journal Title
Nature Materials
Volume: 15
Pages: 1155-1160
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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