2015 Fiscal Year Research-status Report
時間周期的な外場によって駆動された系の非平衡定常状態の研究
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15K17718
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 貴司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00647761)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 周期駆動系 / フロケ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、時間周期外場のもとでの一般的なスピン系のダイナミクスを研究した。その結果、外場の振動数が十分に大きい時には、マグナス展開によって得られる有効ハミルトニアンによる記述が長時間にわたって正しいことが証明された。このことから、系が外場からエネルギーを吸収するheatingの現象が極めて遅いことがわかった。 近年、周期駆動量子系の研究が盛んに行われ、様々な新しい物性が予言されてきた。しかし、一般にheating現象はこれらの興味深い物性を壊してしまうため、heatingの効果が定量的にどれくらいの強さで生じるのかを理解することは重要な問題だった。本研究の成果によれば、外場が十分速く振動するとき、heatingが無視できる長い時間領域が存在することになるが、このことは周期駆動系での興味深い物性の実現を目指した研究を勇気づけるものであり、重要な成果である。 さらに、このような周期駆動量子系が熱環境と相互作用している、量子開放系の場合にどのような定常状態が達成されるかについても研究を進め、周期駆動量子系で実現する興味深い物性が熱環境との相互作用に対して安定である条件を明らかにした。 現実の物理系では必ず熱環境との相互作用があるため、熱環境との相互作用による安定性は非常に重要な問題であった。本研究成果はこの問題を部分的に解決するものであり、実験によって周期駆動系の新奇物性の実現や物性制御を扱う際の重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、考察する物理系を短距離相互作用に限定したときに、どのような結果が生じるのかを明らかにすることは、重要な問題ではあるが解決が非常に困難であると考えていたが、これについて完全に答えを出すことができた。さらに、当初予定していなかった量子開放系についても研究が進展し、論文にまとめることができた。そのため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本来、量子開放系の研究を平成28年度に行う計画だったが、これは平成27年度に解決した。しかし、研究を通して、新たな興味深い問題が浮かび上がってきた。つまり、ある状況のもとで、周期駆動系は熱環境の温度とは異なる有効温度の状態に向かって緩和するという現象を発見したが、この有効温度がなぜ、どのようにして現れるかという問題である。そこで平成28年度はこの問題の解決を目指す。また、熱環境から孤立した周期駆動系のダイナミクスの問題では、スピン系に対しては非常に満足のいく結果を出すことができたが、スピン系以外の系についてはわからないことも多い。今後の研究でその理解を目指す。
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Research Products
(6 results)