2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17722
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
大村 訓史 広島工業大学, 工学部, 助教 (90729352)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 液体金属 / 液体半導体 / 高圧 / 密度汎関数法 / 第一原理分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高温高圧の極限環境下における液体半導体および液体金属の構造と結合状態を明らかにする目的で、第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを行った。今年度は常圧で半導体的性質を示す液体Asと常圧で金属である液体Naに対し計算を行った。これまでに得られた主要な成果は以下の通りである。
1) 液体Asの計算により、液体As中の中距離構造の圧力変化を局所構造の圧力変化から説明することに成功した。通常、複数の原子種から成る液体や四面体構造などの強力な局所構造を持つ液体に中距離構造は現れる。一方、本研究のターゲットである液体Asは単原子液体であり、強力な局所構造を持たない。しかしながら、近年のX線構造解析実験において液体Asが中距離構造を持つことが示唆されていた。そこで、我々は液体Asに対して第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを行い、液体As中の中距離構造の微視的な起源を探った。この計算により、液体Asは常圧において、弱いながらも1つのAsに3つのAsが結合するような局所構造(結晶相においてもみられる構造)がネットワークを形成しており、その局所構造の相関が中距離構造の起源となっていることが明らかとなった。この液体に圧力をかけると、局所構造が壊れ、それに伴い中距離構造もなくなることが分かった。
2) 液体Naに対し計算を行い、超高圧下における構造を明らかにした。液体Naはアルカリ金属なので、常圧下においては3s軌道の電子だけが価電子として結合やその他の物性に関与している。しかしながら、本計算によって、液体Naも300 GPaという高圧下ではs軌道だけでなく、d軌道が結合に関わってくることが明らかとなった。。さらにこのd軌道が結合に関与してくることで、液体中の局所構造が変化し、通常のアルカリ金属では見られないような構造が現れることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高圧下における液体Naの計算機シミュレーションを行うことができ、その構造を明らかにすることができた。さらに価電子を通常の3s軌道だけでなく、2p、2s軌道も価電子として扱った計算を行い、それらが液体中の構造に与える影響を調べることができた。現在、これらの結果を論文にまとめる作業を行っている。
さらに液体Asの計算も行うことができ、これはすでに論文として、公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はNaと同じアルカリ金属である液体KとRbについて計算を行い、液体Naとの類似点、相違点を明らかにしていく予定である。これらの結果から、液体アルカリ金属の超高圧物性に関して、より一般的な知見を得る。さらに、そのようにして得られた知見が、アルカリ金属以外の他の液体に対しても適応できるのか、考察する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、国際会議の発表をヨーロッパやアメリカを想定して計上していたが、今回、中国で開かれた国際会議で発表を行ったため、少ない旅費で講演を行うことができた。さらに計算機使用料についても、予定していたよりも少ない使用料で予定していた計算を行うことができた。以上の理由により、予定額に対して差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、この次年度使用額で、学会などによる成果発表の機会を増やし、より広く成果を広める予定である。また、計算機使用に関しても、この次年度使用額によってより多くの計算を行い、予定よりもさらに詳細まで計算を行う予定である。
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[Journal Article] Charge and Nuclear Dynamics Induced by Deep Inner-Shell Multiphoton Ionization of CH3I Molecules by Intense X-ray Free-Electron Laser Pulses2015
Author(s)
K. Motomura, E. Kukk, H. Fukuzawa, S. Wada, K. Nagaya, S. Ohmura, S. Mondal, T. Tachibana, Y. Ito, R. Koga, T. Sakai, K. Matsunami, A. Rudenko, C. Nicolas, Xiao-Jing Liu, C. Miron, Y. Zhang, Y. Jiang, J. Chen, M. Anand, D. E. Kim, K. Tono, M. Yabashi, M. Yao, and K. Ueda
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Journal Title
The Journal of Physical Chemistry Letters
Volume: 6
Pages: 2944 2949
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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