2015 Fiscal Year Research-status Report
強相関量子少数系から多体系への普遍的アプローチの構築
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15K17727
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西田 祐介 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 准教授 (80704288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 冷却原子 / 近藤効果 / 輸送測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却原子系では多種多様な物性現象を実空間・実時間で観測することが可能である。一方、物性における基本的現象の一つである近藤効果は、これまで冷却原子系において実現されてはいない。しかし、もし近藤効果を冷却原子系において実現することができれば、近藤遮蔽雲の空間的構造やその形成のダイナミクス、あるいは近藤格子系における量子臨界現象への新しい理解を構築する上で有用であると考えられる。過去の研究では、冷却原子系において近藤効果を実現するための理論的な提案を行った。そこで本研究では、冷却原子系において近藤効果を観測するために、以下のような理論的な提案を新たに行った。 まず遍歴するフェルミ原子にスピンを導入し、π/2-パルスを当てることでスピンの重ね合わせ状態を作る。その結果、不純物原子との相互作用によってスピン状態間の遷移が引き起こされる。この系を記述するハミルトニアンは、量子ドット系を記述するアンダーソン模型と同一となる。つまり、本研究で提案した方法では、原子のスピン自由度が量子ドット系における左右の導線の自由度の役割を担うことになる。従って、あらかじめ2つのスピン状態に異なる数の原子を用意しておけば、多数のスピン状態から少数のスピン状態へと原子数の輸送が起こる。この輸送を特徴付ける伝導度は、低温に向かって普遍的な対数的増加を示すので、この量を測定することにより冷却原子系おいて近藤効果を観測することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では想定していなかった、冷却原子系と量子ドット系との関連性を新たに見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって新たに見出された冷却原子系と量子ドット系との関連性をさらに深く追求するとともに、実験グループとの連携を強化し、冷却原子を用いた近藤効果の輸送測定の実現を目指す。
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