2017 Fiscal Year Research-status Report
強相関量子少数系から多体系への普遍的アプローチの構築
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15K17727
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西田 祐介 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80704288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一次元量子系 / ボース粒子 / フェルミ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は一次元量子系における普遍的な物理について研究を行った。
s波のコンタクト相互作用ポテンシャルを持つボース粒子系とp波のコンタクト相互作用ポテンシャルを持つフェルミ粒子系との間には対応関係があり、特に両者のエネルギースペクトルは完全に一致する。しかし、例えば運動量分布のような相関関数は、両者の間で一致しない。本研究では、系のエネルギーを運動量分布で表した際に、ボース粒子系では2体のコンタクト(短距離相関を特徴付ける物理量)のみが現れるが、フェルミ粒子系では二体と三体のコンタクトの両方が現れることを示した。このフェルミ粒子系のハミルトニアンは二体の相互作用ポテンシャルしか持たないにも関わらず、エネルギーを運動量分布で表した際には3体のコンタクトが現れるという点は、予期しなかった驚くべき結果である。この新しい関係式をシュレーディンガー方程式を用いて導出するともに、いくつかの簡単な場合において実際に成り立つことも確認した。この結果は一次元量子系において三体相関の重要性を示唆するものであると考えられる。
また、二体の相互作用だけでなく三体の相互作用を持つボース粒子系を考え、この系に現れる束縛状態についても考察を行なった。特に、二体の引力しか存在しない場合には一つしか束縛状態が存在しないが、三体の引力をわずかでも加えると、新たな束縛状態が直ちに現れることを示した。また、逆に三体の引力しか存在しない場合には、複数の束縛状態が存在し、特に粒子数が多い極限では、基底状態の束縛エネルギーが指数関数的に大きくなることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予期していなかった成果(一次元フェルミ粒子系のエネルギー関係式に、3体のコンタクトが現れること)を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
空間次元や相互作用の性質を変えた際に現れる新奇の束縛状態をさらに探索する。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度も継続して研究に進展があり、その研究を推進することとその成果をまとめた論文を執筆することに時間を費やした。その結果、計画時に想定していた学会発表のための出張などをあまり行わなかったため、旅費において未使用額が生じた。 (使用計画) これまでに本研究で得られた成果をさらに発展させるとともに積極的に発表するため、研究期間を1年延長し、主に旅費として使用する計画である。
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