2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17731
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
猪股 邦宏 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (50525772)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 単一マイクロ波光子検出 / 人工Λ型三準位系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,人工原子として振る舞う超伝導量子ビットとマイクロ波共振器が結合した実験系において,これまで理論的・実験的に実証してきたインピーダンス整合Λ系とよばれる人工Λ型三準位系を実装し,この系において観られる入射単一マイクロ波光子による系の決定論的スイッチングを応用することで,単一マイクロ波光子の高効率検出の実現を目的とする. マイクロ波光子のエネルギーは光通信に用いられる光子のそれと比べて4-5桁小さく,その検出は困難を極めてきた.単一のマイクロ波光子を高効率で補足するために,我々は独自の方法で人工Λ型三準位系を実装し,系に共鳴な入射マイクロ波光子によるΛ系の決定論的スイッチングを応用することを試みた.具体的には,Λ系の状態がラマン遷移によって基底状態から(Λ系の)励起状態を経て,準基底状態である量子ビットの励起状態に遷移する.最後に量子ビットの状態を読み出すことで単一マイクロ波光子の検出となる. 実験では,マイクロ波光子信号として弱コヒーレントマイクロ波をガウシアンパルスで整形したものを用いた.インピーダンス整合Λ系の駆動パルスに同期させてマイクロ波光子パルスを入射し,入射マイクロ波光子のラマン遷移による量子ビットの励起確率を測定することでマイクロ波光子の検出効率を計算によって求めたところ,66%という高い効率でマイクロ波光子が検出可能であることを実証した. 現在,この検出効率は,量子ビットの寿命によって制限されていることが理論的に明らかとなっており,この寿命の改善によってマイクロ波光子の検出効率は90%を超えると期待されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究提案の大きな目標を一つ達成したため.
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Strategy for Future Research Activity |
単一マイクロ波光子検出効率を改善すべく,人工Λ型三準位系を実装している超伝導量子ビットの寿命を改善する. 今回実演したマイクロ波光子検出は,マイクロ波光子がデバイスにやってくるタイミングを予め把握しておかねばならない”タイムゲートモード”動作とよばれる方式である.マイクロ波光子の到達タイミングが分からなくても高効率で対象物を検出できる”連続観測モード”で動作可能な検出器を構築する.
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Causes of Carryover |
当該年度に購入を予定していたものが,実験の進捗状況によって購入できなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はオープンジャーナルであるNature Communicationsに論文が通る見込みであり(現在投稿中で,論文受理間近),投稿費用として50万円程度を見込んでいる. また,この他に学会発表のための旅費と,昨年度購入できなかったマイクロ波関連パーツを購入する予定であり,予算を消化することが可能である.
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