2015 Fiscal Year Research-status Report
超解像フォトサーマル顕微測定によるソフトマター系の非平衡ナノ物性研究
Project/Area Number |
15K17735
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
宮崎 淳 電気通信大学, その他部局等, 助教 (50467502)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光ナノ計測 / 顕微光イメージング / ソフトマター / 非平衡系の物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子、液晶、生体物質など、非一様構造に由来する大きな内部自由度をもつソフトマター系の多様な物性を理解するには、物質内の様々な運動モードを微視的に観察する必要がある。本研究は申請者が独自に開発した世界最高の空間分解能(~100nm)を持つ超解像フォトサーマル顕微鏡を用いて、ソフトマター系のナノスケールの非平衡過程の解明を目的とする。具体的には(1)ナノ領域の熱伝搬、(2)熱発生によって引き起こされる非平衡下でのナノ粒子の運動・揺動を測定する。さらにこれらの測定結果から熱伝搬(散逸)と運動・揺動との関係について明らかにする。 本年度は、レーザー光を高速走査するためにスキャニングミラーを組み込んだ顕微測定システムの構築を行った。またそのための測定用ソフトウエアを開発した。それにより、非一様なゲル中に分散したナノ粒子の特徴的運動を高時間分解で観察することができるようになった。さらに高感度でフォトサーマル信号を検出するための空間分割バランス検出法を発案し、その有用性を確認した。この方法は試料を透過した検出光の中心部と辺縁部を分離しバランス検出することで、PT信号強度を従来法と比べて約2倍向上させる検出法である。また透過光の雑音(同相モード)を抑えることができるため、ショット雑音限界近い高感度検出が可能となる。実際に空間分割バランス検出法をレーザー走査顕微鏡に実装するため同心円2分岐ファイバ束を製作し、信号雑音比を従来法と比べて約5倍向上させることに成功した。また熱伝搬の周波数応答計測のための高速ロックインアンプの試作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では初年度はスキャニングミラーの導入等、現有の実験系を本研究の目的に合わせて発展させる予定で、その目標はおおよそ達成された。また当初計画していなかった空間分割バランス検出法を新しく発案し、実際に実験系に導入して本研究の遂行に非常に有用であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は高精度熱伝搬計測のための高速多チャンネルロックインアンプの製作する。さらに多チャンネルロックイン検出法を応用した高速粒子追跡法を開発し、液体・ゲル中のナノ粒子の運動を高速・高精度で追跡する。さらにこれらの測定から熱伝搬とナノ粒子の運動の関係を明らかにし、当初の目的であるソフトマター系のナノスケールの非平衡過程の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に本経費で購入する予定であったガルバノスキャナを別経費で購入したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は所属変更に伴う実験装置類の運送費、実験環境整備のためオシロスコープ等の汎用計測装の購入費、及び測定精度向上のための多チャンネル高速ロックインアンプ作製費として使用する。
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