2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞間接着と細胞極性から創発される集団運動の数理的解明: 細胞性粘菌を舞台に
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15K17740
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松下 勝義 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (60422440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞の集団運動 / 細胞間接着 / 細胞極性 / シミュレーション / 数理モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性粘菌の集団運動の研究を行うために理論的な研究を行った. Cellular Potts模型を拡張し, 細胞の変形による運動, 細胞接着および細胞極性の自由度を考慮した計算機シミュレータのプログラムングを完了した. また, このシミュレータに必要な計算機としてワークステーションを本科研費をもとに購入し研究室での設置を行った. そして相図作成のための網羅的な研究を行った. その結果, いくつかの予想外の結果を得た. 運動秩序に関しては二つの独立な機構があることが分かった. 一つは細胞運動の極性の維持性に起因するもの. 二つ目は細胞接着の極性を制御因子とするものである. それらの制御因子は細胞運動の揺らぎや細胞密度と共にうまく制御すると動的な相転移様に個別運動状態から集団運動状態への転移を示すことが分かった. 個別にそれぞれの因子を除いた詳細な研究の結果, 極性維持時間に関するものに限っては極性の維持時間できまる距離のスケールと細胞密度のスケールのクロスオーバーで転移密度が決まっていることが突き止められた. 後者に関しては転移点を決める機構は未だ不明であり今後の課題である. この研究から細胞の集団運動の制御につて細胞のパラメータとして重要なものとして, 細胞極性の維持時間と細胞間接着の細胞膜上の分布の二つの重要な要因があることが分かった. 現状では細胞性粘菌において集団運動を行う際, 細胞は双方の細胞のパラメータが制御していることが知られており, 生物がそのような制御を行っている理由が細胞集団運動の形成を容易にするためであるとのシナリオを描くことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーション研究に関する部分は予想より大きな進展を見せ, 研究実績の概要に述べた通り想像しなかった細胞集団運動の機構を解明できた. その反面, 予定していた実験的な検証法のデザインに関する部分に関しては, 研究者当人の異動などのため, 研究協力者との打ち合わせが行えず, 進まなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
集団運動の制御機構の理解は大きく進んだが, 細胞接着と細胞極性の協力による現象というよりもそれぞれの独立な効果の理解であり, その境界でどのような新規現象がみられるかはまだ不明である. 実際の細胞はそのような境界領域の状況になっていると考えられ, 今後は詳細な研究を通して実験的にみられる状況の再現に取り組む.
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Causes of Carryover |
投稿中の論文出版のための費用として準備していた費用5万円が, 論文の査読が伸び, 年度をまたいでしまったために前年度に支払うことができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文出版時に予定通り出版費用として利用する.
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