2016 Fiscal Year Research-status Report
非爆発的噴火から爆発的噴火への遷移を再現する火道流・地殻変動統合数値モデルの開発
Project/Area Number |
15K17741
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小園 誠史 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40506747)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 火山噴火 / 噴火遷移 / 火道流 / 地殻変動 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
火山現象における非爆発的噴火から爆発的噴火への遷移過程について,本年度は火道流数値モデルのパラメータ解析を実施し,さらに火道流の圧力変動を力源とする地殻変動過程の数値モデルを新たに構築することに成功した. 円筒火道と球状マグマ溜まりが連結されたシステムからなる火道流モデルの解析では,火道流による圧力変動量に大きな影響を与えるパラメータであるマグマ溜まり体積・深さ,火道径を系統的に変化させた解析を実施した.その結果,爆発的噴火への遷移に前駆して,まずマグマ溜まりの圧力が増加して極大値に達した後減少する間に,火道内浅部の圧力は増加し続け,噴出率急増の直前に極大値をとる,という変化が広範なパラメータ設定において共通して生じることがわかった.また,その解析結果を地殻変動モデルの入力値に設定できるようにデータベース化した. 地殻変動モデルについては,二次元軸対称の有限要素法に基づき,弾性体によって包囲される円筒火道および球状マグマ溜まりを設定したモデルを構築した.これによって,上述の火道流モデル解析から出力される圧力変化がもたらす任意の地表観測点における変位や傾斜変動,歪変化量を計算することが可能となった.解析の結果,火道流で生じる「マグマ溜まり圧力極大→火道内浅部圧力極大」という時系列変化は地殻変動にも反映されるが,マグマ溜まり圧力の極大化は広域の観測点における傾斜変動によって捉えられる一方で,火道内浅部圧力の極大化は火道内浅部圧力源の深さスケールと同程度の距離における火口近傍地点での歪変化のみによって捉えられることわかった.これらの特徴はマグマ溜まり体積・深さや火道径を現実的な範囲で変化させた場合でも保持されることを確認した.以上の結果から,爆発的噴火への遷移を把握するうえで,広域の傾斜変動観測に加えて,特に直前予測のために火口近傍における歪観測が有効であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目の計画である地殻変動数値モデルの構築を当初の予定通り達成することができた.構築した数値モデルについては,解析解との比較によって十分な計算精度が保証されていることを確認し,また,広範なパラメータ設定に耐え得る安定な解析が可能である.また,当初一年目に予定していた火道流数値モデル解析結果のデータベース化についても二年目に進展させることができた.さらに,三年目に予定していた火道流モデルと地殻変動モデルの統合についても着手している.以上のことから,現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
三年目は,既に着手している火道流数値モデルと地殻変動数値モデルの統合について,現状ではモデル間における圧力変化量入出力が間接的になっている部分を改良し,効率的なパラメータ解析を可能にする.また,火山体において重要となる山体地形の効果を地殻変動モデルに考慮し,特に火道内浅部圧力変化による火口近傍の地殻変動に与える影響を評価する.以上によって,火道流・地殻変動統合モデルを完成させ,本課題の目的を達成する. 完成した統合モデルを用いて,マグマ溜まり体積・深さや火道径などの地質条件に加えて,マグマ粘性や結晶量,ガス浸透率などのマグマ物性パラメータも広範に変化させる系統的な解析を実施することで,噴火遷移中における地殻変動過程の一般的な特徴を明らかにする.以上の解析に基づき,非爆発的噴火から爆発的噴火への遷移検知に必要な観測条件や精度などの定量的な情報を提示する.
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