2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study for estimating the influence of the Greenland ice sheet on observed seismograms
Project/Area Number |
15K17742
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
豊国 源知 東北大学, 理学研究科, 助教 (90626871)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | グリーンランド / 地震観測 / 理論地震波形計算 / 地震波伝播 / 圧力融解 / 地震波干渉法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の第一の目的は,北極の氷床上で観測される地震波形の特徴を理論的に明らかにすることである.このためTakenaka et al.〔2003, GRL〕で提唱された高精度な理論地震波波形計算スキームに,任意の震源メカニズムと地形・海洋・大気の導入を行い,氷床を含む現実的な不均質構造断面での地震波伝播モデリングを可能とした.開発したコードを用いた数値実験の結果は次のようにまとめられる:(1) 震源が氷床直下にある場合,氷床の影響が波形に強く表れる;(2) 氷床内部での多重反射による地震波エネルギーのトラップ機構と,地形・基盤岩の起伏によるトラップ崩壊機構の複合度合いによって,特徴の異なる波動場が形成される;(3) 氷床内にトラップされたS波を「Le波」,氷床表面を伝播する表面波を「Re波」と命名した〔Toyokuni et al., 2015, Polar Science〕. 本課題の第二の目的は,北極の地震観測データを用いて,氷床を伝播する表面波の観測波形を抽出することである.地震活動度が小さい地域でも地震波形を抽出する手法として「地震波干渉法」が挙げられる.これは脈動等で励起された常時微動の連続波形が2観測点で得られている場合,2観測点の波形の相互相関関数を長期間に亘ってスタックすることで,観測点間を常時伝播している微弱な地震波の信号を強めて抽出する手法である.本課題ではグリーンランドの120観測点ペアにこの手法を適用し,ほとんどのペアで明瞭なレイリー波の波形を抽出した.またレイリー波位相速度の季節・経年変化の検出にも成功し,観測された速度変化を,氷床底部の凍結・融解の違いで説明するモデルを提案した.このモデルが正しいなら,地震観測で氷床底部の融解状況を準リアルタイムでモニタリングできる可能性があり興味深い〔Toyokuni et al., 2018, PEPI〕.
|