2015 Fiscal Year Research-status Report
最下部マントルの3次元詳細構造推定およびそのダイナミクスの研究
Project/Area Number |
15K17744
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河合 研志 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20432007)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 地震波形インバージョン / 地震波速度構造 / 異方性構造 / 最下部マントル |
Outline of Annual Research Achievements |
コアマントル境界(CMB)直上の数百キロ(D”領域)の地震波速度異方性構造は地球内部の物質の流動及びダイナミクスを知る上で重要な手がかがりになる。これまでD”領域の異方性構造を調べるために、S波の水平方向2成分(SHおよびSV波)の到達時刻の差を用いられてきた。一方で、CMBの境界条件から、高周波近似である波線理論の限界も指摘されていた。そこで、本研究ではさまざまなD”領域の構造に対して理論地震波動計算を行い波の立ち上がりの時刻をはかることによって、波線理論の妥当性を考察した。地震波動計算を行い波の立ち上がりをはかったS波の走時差と走時計算によって予測される走時差とのずれを「見かけのずれ」と定義する。 標準的な等方媒質構造モデルに対するCMB屈折S波では、非弾性減衰Qの値に応じて0.5から3秒の「見かけのずれ」が見られた。低周波であればあるほど、またQの値が小さいほどそのずれは大きく、「見かけのずれ」が生じる震央距離は周波数およびQの値に依存する。さらに、より複雑な地震波速度構造モデルでは、振幅の小さなフェーズが見過ごされ、振幅の大きな後続波が先行するフェーズと誤認識されることによって、「見かけのずれ」が大きく見積もられてしまう可能性があることがわかった。上部マントルの異方性構造など他の要因を考慮すると、本研究で指摘した「見かけのずれ」によって、S波の水平方向2成分の到達時刻の差を用いた正確なD”領域の異方性構造推定は難しいといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記述した最下部マントルの見かけの異方性によるS波の到達時刻のずれは当初の研究計画以上の成果だと考えられるが、それに関しての学術論文として現在査読中であるため、おおむね順調とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記述した研究を踏まえ、実際の地震観測波形データに適用を行い、様々な地域の最下部マントルのS波速度構造の推定を行う。具体的には現在中米および北極の下の3次元S波速度構造推定を行っており、異方性構造や他の地域の速度構造の推定を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
新型CPUが次年度に発売されるとの情報を得たために購入予定であったPCを次年度に購入することとしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
新型CPUを搭載したPCの購入を行う。
|