2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidate a tidal phenomenon to improve the mid-term risk evaluation for the occurence of large thrust-type earthquakes
Project/Area Number |
15K17746
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 愛幸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90508350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スロースリップ / 潮汐 / 海溝型地震 / 地殻変動 / 重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、潮汐がプレート境界における断層すべりの周期的なゆらぎを引き起こしているメカニズムを、高精度な重力連続観測に基づいて明らかにすることにある。昨年度、プレート境界すべりの長期的なゆらぎであるスロースリップ中に、プレート境界に沿って流体が上昇している可能性があることを重力観測から発見した。これは、予想していたゆらぎ発生のメカニズムに関わる重要な発見であり、今年度はその理解をさらに深めるため、流体移動が重力変化のみならず地表の地殻変動も引き起こしている可能性を検討した。昨年度開発したモデルは流体の通り道である断層破砕帯の外側は剛体と仮定していたため、地殻変動は原理的に生じない。そこで、地殻全体を弾性体と仮定するいわゆる茂木モデルを用いて、間隙流体圧が変化した際に生じる地表変形を見積もった。流体圧を様々に変化させシミュレーション計算を行った結果、GNSSで観測したスロースリップ中の地表地殻変動と、同期間に相対的に減少した重力変化の両方を説明できる間隙流体の増加量が、スロースリップを引き起こした断層破砕帯の体積の1%より小さいことが分かった。この上限値は地質学的に現実的であり、流体移動が重力観測だけでなく地殻変動も引き起こすことが分かった。この結果は、スロースリップに伴い流体がプレート境界に流れ込むことで、潮汐に対するすべりが増幅されることを暗に意味する。以上から、プレート境界すべりゆらぎの発生するメカニズムを観測に基づいて示すことができた。さらに、潮汐による弾性応答としての地表地殻変動を正確に見積もるために、地殻・マントルの水平不均質構造を考慮した変形の理論計算手法を開発した。現在、上記の流体挙動やメカニズムをより定量的に明らかにするため、連続観測に適した重力計の観測点を増やすことを計画している。
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