2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17755
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Research Institution | Hot Springs Research Institute of Kanagawa Prefecture |
Principal Investigator |
行竹 洋平 神奈川県温泉地学研究所, その他部局等, 研究員 (20435853)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地殻流体 / 群発地震活動 / 震源移動 / 低周波地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主要な目的である、震源の移動現象に基づき地殻内の流体分布を明らかにすることを実施するため、昨年度に開発した震源移動現象を客観的かつ自動的に検出する手法の妥当性の検証及び改良を進めた。検証には箱根火山の震源カタログを用いて、現存する問題点についての洗い出しを行った。 火山性流体と火山深部で発生する深部低周波地震活動との関連性についても調査を行い、マッチドフィルター法(例えば、Peng and Zhao, 2009)を用いて箱根火山における深部低周波地震カタログの再整備を行った。その結果、深部低周波地震活動と火山深部の膨張や火山構造性地震の活発化時期に相関がみられることを明らかにした。深部低周波地震が地殻内の火山性流体の移動に密接に関連している可能性があり、今後さらに検証を進めていく予定である。 2015年箱根水蒸気噴火時に発生した火山性微動についても解析を進め、その発生源は噴火口近傍のごく浅部に推定された。火山性微動が地殻内の非常に浅い場所に地殻流体が貫入してきた際に、励起される現象であることを明らかにした。 さらに、箱根火山内における地震観測点の連続波形記録を用いて、地震波干渉法により火山内部の地殻構造の時間変化を推定した。その結果、活発な群発地震活動が起きる期間では有意な地震波速度の低下が起きていたことを明らかにし、群発地震活動と地殻流体及びそれに伴う地殻内での歪変化との関係が明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本列島規模での地震活動への適用はやや遅れているものの、箱根火山における地殻流体と地震発生との関係については多方面から詳細な検討を進めるととができたので、概ね順調に進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
箱根火山での地震活動について、震源移動速度の時間変化等について詳細に調査する。また深部低周波地震や火山性微動と地殻流体との関係性について、地震活動の時間変化や地殻変動との関係などから議論を進める。研究を始めた当初は通常の地震にのみ着目し、地殻流体との関係を議論する予定であったが、箱根火山でのこれまでの研究成果を通して、地殻内の流体移動はその場の温度圧力などの条件により、通常の地震ではなく低周波地震や微動という現象で観測される可能性が明らかになった。今後は、こうした特殊な地震活動についても対象を広げ、流体分布についての調査を進める。また、通常の地震活動における震源の移動現象に関する解析を他地域にも適用し、地震発生と地殻流体との関係についてさらに議論を深める。
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Causes of Carryover |
参加予定していた学会が他の業務との関係で参加できなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会や研究集会への旅費、論文出版料として使用する予定。
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