2017 Fiscal Year Research-status Report
高解像度気候計算のための広帯域放射伝達モデルの革新的研究
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15K17759
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
関口 美保 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00377079)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大気放射 / 気体吸収 / 地球温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、昨年度から引き続き全球気候モデルで採用されている放射伝達モデルの改良、特に気体吸収過程の改良を中心に研究を進めた。 吸収過程における連続吸収体の吸収プログラムの更新が一昨年から昨年度にかけて行われたため、これらの確認を行った。また、波長、気圧(高度)、温度における気体吸収の変化に対する内挿法および解像度の検討を行った。これらを確認の上、気圧27点(1100-0.01hPa、対数線型)、気温10点(150-330K、20Kごと)、吸収係数のデータベースを作成した。この波長解像度は波長領域ごとに異なり、短波領域でも細かい解像度を保ったままにしているところが従来と異なるところであり、精度の向上が見込まれる。 また、今年度は放射伝達モデル本体の見直しにも着手した。まずは放射スキームの高速化について検討を行った。吸収係数の内挿に使用するサブルーチンPTFIT2について、一層ずつ探す方法からコーディングで整数に変換する方法を試みたところ、PTFIT2が35%高速化した。この高速化の検討に伴い、放射コードの全般的な見直しも行った。 さらに、3次元放射の影響を簡易的に取り入れるための比較研究を始めた。これまで、1次元放射伝達コードを利用した近似法のIndependent Pixel Approximation (IPA/ICA , Stephens et al., 1991; Cahalan et al., 1994)やTilted Independent Pixel Approximation (TIPA, Varnai and Davies,1999) が開発されている。これらの近似法で算定する放射量に対して、3次元放射伝達コードによって見積られた放射量の違いを定量的に評価した。IPAでは精度が不十分であるが、TIPAは3次元効果を良く再現していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では飛躍的に発展を遂げる全球気候モデルに対応する放射伝達モデルの開発を主目的としている。 今年度は、本研究のメインである気体吸収テーブルの再更新に向けた基礎研究及びデータベースの準備を行った。これにより、スムーズな研究遂行が可能となった。また、放射伝達モデルは全球気候モデル中でも計算割合が大きく、可能な限りの高速化が求められているため、モデルの見直しをおこない、高速化への道筋をつけた。その他のルーチンについては期待されるような効果が望める箇所は見つからなかったが、引き続き検討を行う。現時点ではアルゴリズム上の変更は難しいと考えられるため、プログラミング上の工夫や計算機特性を生かしたコーディングにより効率化を図っていきたい。さらに、今年度は3次元放射の近似法と3次元放射、1次元放射の比較も行い、近似法によっては3次元放射の影響の取り込みが不十分であることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究期間は残すところあと1年であるので、これまでの研究の集大成である温室効果気体による気体吸収テーブルの再更新を行う。標準状態から温暖化状態、二酸化炭素4倍増まで対応したテーブルを作成し、放射強制力の精度を十分満たすテーブルを作成する。放射伝達モデル本体においては、高速化の検討を引き続き行い、太陽放射領域と地球放射領域の放射伝達過程の切り分けを行う。また、3次元効果の導入や海洋・地表面過程の改良についても研究を進める。 また、今年度はIPCCに参加する放射強制力のモデル間相互比較プロジェクトRFMIPが開かれるため、MstrnXで参加し、開発した広帯域放射伝達モデルの検証と性能評価比較を行う。 さらに、本研究の成果を気候モデル開発者と共有し、精度と速度の両立を目指しつつ、調整を行う。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度のため研究成果の公表のために経費を使用しようと考えていたが、次年度の6月にロンドンで開催されるRFMIP(放射強制力モデルのモデル間相互比較プロジェクト)の参加費及び旅費が必要となったことがわかったため、今年度からの経費の繰越を行った。
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Research Products
(3 results)