2015 Fiscal Year Research-status Report
熱帯対流圏界層クロック・トレーサー濃度変動と成層圏大気年齢についての研究
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15K17760
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| Research Institution | Hokkaido University |
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Principal Investigator |
稲飯 洋一 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 博士研究員 (50587623)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 熱帯対流圏界層 / 対流圏成層圏物質交換 / 流跡線解析 / 大気輸送 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
成層圏大気が対流圏を離れてからの経過時間は「成層圏大気の年齢」として定義されており、二酸化炭素や六フッ化硫黄などクロック・トレーサーの濃度により評価される。化学輸送モデルや化学気候モデルを用いた計算では近年の温室効果気体の増加に伴う成層圏子午面循環の強化によって成層圏大気の年齢が減少することが予測されているが、実際に観測されている成層圏のクロック・トレーサー濃度データからは成層圏大気の年齢の減少は否定されている。対流圏から成層圏へ流入する大気は、対流活動により対流圏から熱帯対流圏界層（TTL）まで持ち上げられ、その後TTL内を準水平的に循環しながら成層圏へ流入していくため、成層圏大気の年齢は成層圏内の輸送速度だけでなくこのように成層圏へ流入していく大気のクロック・トレーサー濃度にも影響されると考えられる。そこで本研究では客観解析再解析データを用いた流跡線解析により、対流圏とTTLにおける大気輸送場の変動とそのクロック・トレーサー濃度への影響を評価する。
まず、対流圏において流跡線解析結果と二酸化炭素濃度との関係性を明らかにするために、熱帯域における気球観測により得られた二酸化炭素鉛直プロファイルに対して後方流跡線解析を実施した。その結果、二酸化炭素濃度はその空気塊の起源となる緯度にある程度依存していることが示された。次に、対流圏からTTL上端までの輸送過程についてその季節的および長期的な変動を評価するためにTTL上端として定義した緯度30度以内の400 K温位面上の格子点から1980年1月から2014年12月までの期間について90日間の後方流跡解析を実施した。その結果からTTL上端大気の起源は明瞭な季節変動を持つことが示され、さらに長期変化傾向があることも示された。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TTLにおけるクロック・トレーサー濃度の見積もりに関して、当初の研究計画では上部対流圏で航空機観測された空気塊からの前方流跡線解析により行う計画であった。しかし航空機観測データの観測地点は北半球の特にアジア域に偏在しているため前方流跡線解析により見積もられたTTLクロック・トレーサー濃度もアジア域に偏った値になってしまう問題が生じた。この問題を回避するため、上に述べたように400 K面上の均一な格子点から後方流跡線を計算する手法に変更し流跡線解析を再度実施した。この変更に伴い研究計画に遅れが生じたが、変更後の結果はすでに得られており現在はその解析を進めている段階である。
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| Strategy for Future Research Activity |
これまでの流跡線解析結果により得られたTTL上端大気の起源の長期変化傾向についてその結果の検証と原因の解明を行う。具体的には、より高分解能な全球気象データを用いた解析を行うことでこれまでの結果を検証、補強しつつ、衛星観測データを用いて広域かつ長期間の対流活動を調査することで赤道から中緯度までの対流圏における鉛直輸送を把握しその長期変動を推定する。そのように見積もられた対流圏内の鉛直輸送の変動をこれまでに得られている結果と比較し、TTL上端大気の起源の長期変動の原因を特定する。
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| Causes of Carryover |
研究計画で新規購入予定であったPCについては既存のPCを利用することができた事に加えて、進捗状況の欄に記したように解析のやり直しに伴う研究の遅れもあったため、早期の購入に拘らなかった（このため年度末の発注となり、以下の「使用計画」で述べるように次年度に計上されることになった）。また学会発表の旅費については他の財源を充当することができた。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度中にデータ保管用ハードディスクと解析・発表・論文作成用PCを発注していたが、納品が年度を跨いでしまったためこれらを次年度予算に計上する。これに加えて成果発表のための旅費、誌面による発表のため原稿の英文校正料と投稿料を計上する予定である。
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Research Products
(5 results)
