2016 Fiscal Year Research-status Report
衛星観測・大気再解析データの相互比較による堅牢な成層圏大気像の描出
Project/Area Number |
15K17761
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂崎 貴俊 京都大学, 生存圏研究所, 研究員 (70723039)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 大気潮汐 / 再解析データ / 衛星観測 / 成層圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度からの研究を発展させ、7種類の再解析データ(MERRA-2, MERRA, JRA55, JRA55C, JRA55AMIP, ERA-Interim, CFSR)(期間:2006-2012年の7年間)と衛星観測データ(SABER, MLS)を用いて日周期変動に関する解析を行った。具体的には(a) 太陽同期一日潮汐、(b) 太陽同期半日潮汐、(c) 太陽非同期潮汐、の各成分について詳細なデータ間比較を行った。その結果、(a)についてはSABER衛星とその他(再解析・MLS衛星)で上部成層圏に有意な差が見られることが分かった。はっきりした原因は不明だが、これまで観測値として信頼されてきた衛星観測自身に問題がある可能性がある。一方(b-c)については、データセット間で系統的な差は見られないことが明らかになった。 さらに、再解析データの大気潮汐の長期変化(1980年-2010年の30年間)についても調べた。その結果、精度の高い衛星観測が始まる以前(2000年以前)のデータは大気モデルへの依存度が強く(つまり、同化される観測データへの依存度が小さく)、再解析データ間のバラつきが相対的に大きくなっていることが明らかになった。この結果は、再解析データを用いたトレンド解析の結果に注意を促すものである。 上記の結果はS-RIP(再解析比較の国際プロジェクト)の国際会議で発表を行い(口頭発表)、現在ジャーナル論文を執筆中である。 さらに、再解析データの大気潮汐の位相の季節変化を調べたところ、視太陽時(Apparent solar time)の季節変化(つまり、太陽の南中時刻の季節変化)を考慮する必要があることが明らかになった。現在ジャーナル論文に投稿中である(Hamilton and Sakazaki, 2017)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メインターゲットである大気潮汐に関する比較解析を終えた。また、異なる種類のデータを比較することで、見つかった差異(特に上部成層圏における太陽同期成分の振幅)が観測データ側にある可能性が示唆された。論文も近日中に投稿予定である。 また解析の中で、"視太陽時(Apparent solar time)の季節変化"という、従来の研究でほとんど考慮されていない要素の重要性が明らかになり、共著論文にまとめた。 以上の進捗状況に鑑みて、研究は順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在執筆中の論文を完成させジャーナル誌(Atmospheric Chemistry and Physics誌を予定)に投稿する。現在投稿中の論文についても、査読結果に対応した追加解析・原稿修正などを行う。本成果を踏まえ、地球大気衛星観測に求められる要素・精度などを整理し、今後の観測計画等にも貢献したい。
|
Causes of Carryover |
論文掲載費を見込んでいたが、論文の投稿が来年度以降になったのが主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は学会発表や論文執筆の打ち合わせを複数予定しており、その費用(参加費・論文掲載費)や旅費として使用させていただく予定である。
|