2015 Fiscal Year Research-status Report
衛星搭載ライダを用いた下層雲微物理量の全球特性解析
Project/Area Number |
15K17762
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 可織 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00584236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 衛星搭載アクティブセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
雲の鉛直各層における減衰と多重散乱により、ある時間に受信されるライダ光は、各層の微物理特性を反映したものとなっている。特に衛星からは、それらの適切な取り扱いなしには、雲微物理特性の鉛直構造や雲底の推定に大きな不確定性が生じる。その効果を考慮するために、均質層に対するバックワード・モンテカルロ計算を行い、ライダ後方散乱の垂直成分と平行成分を鉛直各層からの寄与に分けた詳細な解析を実施した。それらの解析結果を利用し、雲の微物理パラメータの関数とした均質層の参照テーブルの線形結合から、鉛直方向に微物理特性が変化する任意の不均質層におけるライダ光を再現するフォワード計算法の開発を行った。仮想的な雲に対して、バックワード・モンテカルロ計算と、開発した手法により作成したライダ観測量の詳細な時空間構造の比較検証を行った。その結果、単純な線形結合では再現性に大きな誤差が生まれるが、観測量に含まれる主要な散乱過程の解釈に基づいて不均質性の効果を反映する事で、開発した手法が数値計算から求めたライダ信号の挙動を良く再現し、多重散乱成分の見積もりを実用的な速度で概ね適切に行えることがわかった。これらのことから、本研究課題の平成27年度の研究目的であった、不均質な雲からのライダ観測量を、時間を要するモンテカルロ計算を逐一行うことなく再現することが可能となり、その研究成果を国内外の学会や国際誌等において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的として、衛星ライダの後方散乱係数と偏光解消度の全球解析に適する高速なフォワード計算法の開発を掲げた。これに関しては、モンテカルロ計算から得られた均質層における一次元のライダの参照テーブルから、任意の不均質層からのライダ散乱光の時空間分布を実用的に推定する手法を開発することで達成し、国際学会27th International Laser Radar Conference等において発表を行った。さらに、より多重散乱過程の高速な取り扱いを可能とする、均質層の参照テーブルを使用しない汎用性の高い物理モデルの構築にも着手しており、次年度以降に実施予定のフォワード計算法を組み込んだインバージョン・アルゴリズムの開発と実衛星データへの適用が順調に進むと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した物理モデルをさらに発展させ、視野角など多様な観測条件や雲の鉛直構造において適切に観測量を再現出来るか更なる検証を実施する。物理モデルを組み込んだインバージョン・アルゴリズムを開発し、これまで衛星ライダの水雲の解析において十分になされていない雲底の推定や、衛星ライダに同期する複数の衛星データを複合利用することで水雲内に混在する雲粒子、霧雨、降水粒子などの微物理特性を分離して抽出する新たな手法を構築する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] The EarthCARE Satellite: The Next Step Forward in Global Measurements of Clouds, Aerosols, Precipitation, and Radiation2015
Author(s)
A. J. Illingworth,H.W.Barker,A.Beljaars,M.Ceccaldi,H.Chepfer,N.Clerbaux, J. Cole, J. Delanoe C. Domenech, D. P.Donovan, S. Fukuda and M. Hirakata, R. J. Hogan, A. Huenerbein, P. Kollias, T. Kubota, T. Nakajima, T. Y. Nakajima, T.Nishizawa, Y. Ohno,H.Okamoto,R.Oki,K.Sato,M.Satoh(他5名)
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Journal Title
Bulletin of the American Meteorological Society
Volume: 96
Pages: 1311-1332
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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