2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代数値気象ライブラリで拓く、低層雲の地域横断的研究
Project/Area Number |
15K17766
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 陽祐 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 基礎科学研究員 (10633505)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低層雲 / 雲微物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気候予測に用いられる全球モデルの予測精度向上を目指して、気候変動に大きな影響を及ぼす低層雲を対象とした数値実験を行う。様々な領域で発生する低層雲の中でも、特に日本付近の低層雲を対象とした数値実験を行う。その結果とこれまで大陸の西岸を中心として行われてきた低層雲の数値実験の結果を比較することで、低層雲の地域特性の差や、その差を生む雲微物理的な要因を明らかにし、全球モデルにおける低層雲の再現性の向上に資する知見を得ることを目指す。 平成27年度は、現状の全球モデルで表現されている低層雲に関する解析を行った。低層雲の微物理特性の地域差を詳細に知るため、全球雲解像モデルNICAMを用いて全球実験を行い、低層雲の地域特性を調べた。低層雲の微物理特性に大きな影響を与える雲微物理過程としてAutoconversionとAccretionが重要であることが先行研究などを通して知られている。数値実験の結果から、これらのプロセスが低層雲に与える影響の大きさの地域特性を調査し、これらのプロセスが低層雲の放射伝達過程を通して地球のエネルギー収支に与える影響の大きさを見積もった。結果の解析から、これまで主に数値実験が数多く行われてきた、大陸西岸の安定度が高い領域においてAutoconversionとAccretionが低層雲に与える影響が大きいことが明らかになった。これらの結果については、国内学会、及び国際学会でそれぞれ口頭発表(1件)とポスター発表(1件)を行った。また、現在投稿論文としてまとめる準備をしている。 同時に本研究で用いるSCALE-LESを日本付近を対象とした実験ができるように改良を行った(モデルの高速化と物理プロセスの改良)。この改良によって少ない計算資源でも日本付近を対象とした低層雲の数値実験が可能になった。これらの開発に関しては平成28年度に国内学会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を進めていく中で、本研究で用いる予定であった数値モデル(SCALE-LES)の微物理モデルが低層雲を再現するためには不十分な点があることが明らかになった。加えて、課題申請時に、同時に申請していたHPCIの一般課題の計算資源を得ることができなかったため、少ない計算資源で計算が可能で、かつ日本付近を対象とした実験が行うことができるようにモデルを改良することが必要となった。 それにより平成27年度の多くの時間を数値モデルの改良に費やしたため、当初の予定より研究の進行は予定より遅れている。 平成27年度までに数値モデルの改良は概ね完了したため、平成28年度は研究をこれまで以上に進めていくことが可能になる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに改良した、少ない資源でも数値実験が可能になった数値モデルを用いて日本付近を対象とした実験をすでに始めている。また課題代表者が所属する機関の計算資源も加えて用いることで十分な計算資源が平成28年度は確保できる見込みである。 これらの計算資源を最大限利用して、数値実験行っていくことで、平成28年度において、平成27年度の遅れを取り戻せる見込みである。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく中で、本研究で対象とする日本付近の低層雲を再現するために、数値モデルの大幅な改良が必要であることが明らかになった。それに伴い、平成27年度にモデルの改良を行ったため、数値実験ができず、スーパーコンピュータの利用料として使用予定の予算を消費しなかった。また数値実験を行わなかったために、計算結果を保存するデータストレージを購入する必要がなく、それらの予算を利用せず、次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は数値実験を行う予定であり、データを保存する大容量のストレージを購入するために繰り越した費用を利用する予定である。 同時に計算資源確保のために、大型計算機の使用料としても利用する予定でである。
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