2015 Fiscal Year Research-status Report
地震同時性化学反応の実験的解明:急速加熱水熱試験機を用いた炭質物熱熟成の定量化
Project/Area Number |
15K17779
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
濱田 洋平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 研究員 (80736091)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震同時性化学反応 / ビトリナイト / 熱熟成 / 瞬間加熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震時、断層の運動に伴って非常に大きな摩擦熱が生じ、断層内部や近傍の母岩の温度を急激に上昇させる。この温度上昇によって様々な地震同時性の化学反応や構造変化が引き起こされ、その痕跡が断層の詳細な化学分析、構造解析から明らかにされてきた。この「地震同時性化学反応」を、断層運動の場を模擬した急速加熱水熱試験によって実験室的に再現・定量化することが本研究の目的である。平成27年度は、この目的の達成のために地震時の摩擦発熱と環境を模擬することを目指した断層の摩擦発熱速度に対応する加熱手法、含水堆積物中に対応する試料-水圧の実験システムの構築を検討した。具体的には、実験に適した急速加熱炉をくみ上げ、単純加熱の予備実験を行った。加熱炉としてカーボンコンポジット製の電熱線型ヒーターを選択し、電流増幅トランスを介することで、1000℃までの昇温を10秒以内に達成できるよう組み上げた。また、実験に使用する試料の加熱前の物性値、炭質物熟成度、鉱物組成比の測定を行い、加熱実験前の反応初期値を決定した。以上により、平成28年度実施予定の急速加熱試験の準備を整えた。 また、実験予定内容の対比例として、地震断層近傍のビトリナイト反射率の分析結果を用いて、断層近傍での反射率の速度論を用いた温度推定法の提案を行った。本提案により、今まで検討されていなかった断層近傍の地震同時性化学反応の空間分布について、任意の温度-時間による反応率の変化が定量的に評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究予定では、平成27年度において「試料採取と熱・水理パラメータの作成」と「急速加熱実験装置の検討・製作、予備実験」を行う予定であった。実験用試料として房総半島に露出する新第三系付加地質帯の含ビトリナイト砂質岩、および異なる炭質物熟成度を示す種子島四万十帯含ビトリナイト砂質岩を用意し、それぞれについて薄片試料作製と炭質物の分離を行った。また、実験試料の解析をする上で基礎的な物性パラメータである比熱容量および熱拡散係数をそれぞれホットディスク法で測定した。また、加熱装置の検討については、加熱ユニットのくみ上げ、試運転を行い、温度上昇とモニタリングが行えることが確認された。以上のように、平成28年度の実験の実施に向け、充分に準備を遂行できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度については、当初の予定通り「急速加熱水熱実験の実施」、「ビトリナイト反射率の分析と見かけの反応速度の決定」及び「断層すべりパラメータの再推定」を実施する予定である。平成27年度に製作予定であった急速加熱システムの予算を、水熱容器の設計改良・作成費として計上し、水熱実験の精度向上を目指す。その後、当初の予定通り、平成27年度に準備した実験試料について、急速加熱実験、化学分析を行い、速度論的解析を通して、急速加熱時のみかけの速度論の決定を行う予定である。ついで、作成された速度論を基に、ビトリナイト反射率の異常が認められた南海トラフプレート境界断層及び巨大分岐断層、陸上アナログ断層についてすべりパラメータの再推定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、本研究課題のみで製作を予定していた「高速昇温装置ユニット」を、他の研究課題との共用品として別予算にて購入・製作したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高速昇温装置内部にて、より高精度の圧力測定を行うための圧力測定ユニットの導入、及び水熱高速昇温実験のための圧力容器の耐温性能高度化を行い、より幅広い実験条件下において、高速昇温実験を行う予定である。
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[Journal Article] Estimation of slip rate and fault displacement during shallow earthquake rupture in the Nankai subduction zone2015
Author(s)
Hamada, Y., Sakaguchi, A., Tanikawa, W., Yamaguchi, A., Kameda, J. and Kimura, G
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Journal Title
Earth Planet and Space
Volume: 67:39
Pages: 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant