2015 Fiscal Year Research-status Report
前期~中期中新世の熱帯・赤道循環系の形成とインドネシア海峡の閉塞との相互関係
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15K17780
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
上栗 伸一 茨城大学, 教育学部, 准教授 (00612152)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中新世 / 放散虫化石 / 層序 / 赤道太平洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の目的は,前期中新世から中期中新世の低緯度放散虫化石層序を確立することである.研究試料には統合国際深海掘削計画(IODP)によって掘削された過去800万年間にわたる堆積物を使用した.掘削地点は東部太平洋のU1335地点であり,岩相は主に石灰質軟泥より成り,保存の良い放散虫化石を含む.これらのコア試料から合計74試料を採取し,試料処理を施した後,検鏡用のプレパラートを作成した.本研究では合計230の種・グループが産出した.これらの群集は,太平洋低緯度の標準微化石層序の示準種を含むので、RN2からRN5の4化石帯に区分することができた.GTS2012によると前期/中期中新世境界はC5Cn.1nの最上部に設定されているので, U1335地点の189.6 mcd に境界をおくことができた.U1335地点のコアから,合計45の出現・消滅事件を確認することができた.そのうち17の事件が前期/中期中新世境界付近(16.5~15.5 Ma)で,8の事件が中期中新世中期(13.7~13.4 Ma)で認められた.これらのことから2つの時期にfaunal turnoverが起きたことが分かる.最初のfauna turnoverはmiocene climatic optimumと呼ばれる汎地球規模の温暖化の時期に起きた.この時期は赤道太平洋で一次生物生産性が活発化したことで知られている.したがって生物生産性の増加が原因である可能性がある.2番目のfaunal turnoverは南極氷床の拡大に伴う汎世界的な寒冷化の時期に一致する.赤道太平洋でも著しい水温低下が起きたことが報告されているので,水温低下がこのturnoverの原因である可能性が高い.しかしこれら2つのturnoverは始新世/漸新世境界のそれに比べると小さな変化であったといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通りに研究が進んでいる.初年度前半は,新第三紀の古海洋およぶ古生物学に関する文献調査を行った.本研究の目的は放散虫化石の群集解析に基づいて,前期~中期中新世の赤道太平洋における海洋環境を復元することである.しかしこれらの時代の放散虫化石の種類は,現在は生息していない絶滅種を多く含むため,絶滅した放散虫化石の古生物地理的な情報を得る必要があった.文献調査によって明らかになった放散虫化石の絶滅した各種の地理的分布から,温暖種と寒冷種の2つのグループに分けることができた.さらに温暖種に関しては西部群集と東部群集の2グループに細区分することができた.その成果の一部を6月の古生物学会で発表することができた. 初年度後半は,上記概要の通り,前期~中期中新世の東赤道太平洋の放散虫化石層序を確立することができた.9~12月にかけて実験室で海洋底堆積物を薬品処理したのちに微化石を抽出し,検鏡用のプレパラートを作成した.このプレパラート作成のために初年度の研究費を使用した.顕微鏡で微化石を同定しつつ,代表的な個体の写真撮影を行った.この撮影した映像をパソコンにとりこみ,分類学的な論文執筆のため,イラストレーターで微化石写真プレートを作成した.この画像取り込みのパソコンを購入するため初年度の研究費を使用した.詳細な分類学的な検討の結果,種の出現・絶滅の歴史を明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も当初の予定どおりに進めていく.東赤道太平洋における放散虫化石の群集解析を行うために,初年度に作成したプレパラートを使用して放散虫化石を種ごとに計数する.海洋環境変遷は,生物群集の統計値である種多様性などからも推測することができる.放散虫化石は熱帯において種多様度が低く亜熱帯で比較的高くなる.すなわち種多様性は温度勾配と相関がある.種多様性は様々な方法で測定することができる.種ごとの計数の結果を基にして,種数,種多様度,均衡度を計算する. さらに放散虫群集はクラスター解析によっていくつかのグループに分けることができる.初年度の(古)生物地理的研究に基づいて,各クラスターの環境指標を決定する.各クラスターの産出頻度の変遷から海洋環境(相対水温や湧昇流など)を復元することができる. 後半は初年度~2年目前半に得られた放散虫化石層序に関する論文執筆にとりかかる.
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用することができたが,HPなどで公表されている値段と多少異なる物品があるため,予定額を超えないように配慮して使用した結果,17351円の残高になった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
微化石プレパラートを収納するプレパラートボックスを購入する予定である.
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Radiolarian stratigraphy near the Eocene-Oligocene boundary2015
Author(s)
Moore, T.C.Jr., Kamikuri, S., Erhardt, A.M., Baldauf, J., Coxall, H.K., Westerhold, T.
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Journal Title
Marine Micropaleontology
Volume: 116
Pages: 50-62
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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