2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17782
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松崎 賢史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員 (50728582)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表層水温復元 / 中層水温復元 / 放散虫:古海洋復元指標 / 適切性 |
Outline of Annual Research Achievements |
放散虫は珪質の殻を持つ微生物であり、本研究ではその放散虫化石を黒潮海域で適切な古海洋復元指標として確立する事が目的である。一年目では現世放散虫の海洋中の深度分布を調べ、どの種が表層水と中層水に生息しているのかを再定義することができた。 H28年度ではH27で得た知識を考慮しながら北西太平洋の緯度0-50°における87地点で採取した表層堆積物中の放散虫群集を分析した。分析後、全群集から表層種・中層種のみを抽出し、過去の表層水温・中層水温を復元する放散虫化石のデータベースを確立した。放散虫化石のデータから水温復元する為には古典的な伝達関数法という解析法を応用した。結果として本研究で新たに提案したデータを使用すると過去の表層水温を±0.9℃・中層水温を±1.2℃で復元できる事が明らかになった。 適切性を確認する為東シナ海で採取された海洋コアに本研究で提案しているデータと手法を応用した (IODP Exp. 346 Site U1429)。過去5万年間の東シナ海における表層水温・中層水温を復元してみたところ:1、 表層水は間氷期(温暖時)では夏季表層水温は27℃、氷期(寒冷時)ではおよそ20℃であり地球化学の手法を応用して復元した水温値と近い事が明らかになった。 2、 中層水は間氷期(温暖時)・氷期(寒冷時)での温度差は低めであり(±3℃)、間氷期(温暖時)と氷期(寒冷時)の境界時に温かめの水温を記録した (8℃)。最終的には表層水温・中層水温を復元する為に使用した主な放散虫種の地理分と水温との関連について議論をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期計画では:一年目:現世放散虫の海洋中の深度分布の調査; 二年目:放散虫種から表層水温・中層水温の復元手法; 三年目:海洋コアへ応用:第四紀から中新世。 現時点では隔年ごとの目標を達成しております。一年目では東シナ海を代表として表層水と中層水に生息している種の定義を行い、その知識を考慮して北西太平洋における表層堆積物の放散虫群集変化を分析して表層・中層水温を復元するデータセットの確立と手法の提案をしましたので現時点で順調です。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の目的は確立した手法を海洋コアで得た放散虫群集に応用し、確立したデータセットと手法が適切である事を証明し、可能であれば時間軸でどこまで応用可か明確にする事です。その為過去40万年の表層水温・中層水温を東シナ海で復元してそれぞれの水温変動に関係している古海洋環境の変動を議論する事を考えています (IODP Exp. 346 Site U1429)。その後、過去1000万年における中層水温も同手法で復元できるかをチェックする為IODP Exp. 346 Site U1425の群集の本復元手法を応用してみます。
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Causes of Carryover |
昨年度投稿した論文2件の英語の校正が1件減りましたので論文の英語校正費が18万円程度減りました。論文の校正費が減った理由は投稿した原稿が一件に減りましてその原稿は第一査読の後微修正で早く受理されたからです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は一件の論文をオープンアクセス雑誌に投稿する予定です。投稿費が20万円ですのでそちらに昨年度余った金額を使用する事を考えています。
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Research Products
(5 results)