2016 Fiscal Year Research-status Report
隕石の多元素同位体分析から原始太陽の挙動を理解する
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15K17791
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
馬上 謙一 北海道大学, 理学研究院, 助教 (70624758)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メリライト / 銀河宇宙線 / 希ガス同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はNaを含む火成メリライトの成因を鉱物組成・化学組成から把握した上で,二次イオン質量分析装置を使った同位体分析を行う.この分析でNa-22の放射壊変起源Ne-22を持つ可能性のあるメリライト結晶を見つけ出し,局所希ガス同位体分析によって,原始惑星円盤中で生成されたNa-22の痕跡を探る.Na-22はBe-10などと比べ半減期が極めて短いため,Na-22/Na-23初生比を知ることができれば、CAIに取り込まれた消滅核種が短期間で生成されたものか,ある期間定常的に作られていたかを明らかにすることが出来る. 本研究では,数十個の火成メリライト候補の探索・観察を終えたが,火成メリライトを発見することはできなかった.そこで,二次変性によって生成されたNaを含むCAIを用いてSIMS分析及び希ガス同位体分析を予備実験兼的に行うことにした.それと並行して火成メリライトの探索を進めている.現在,試料の研磨及び電子顕微鏡観察が終了し,SIMSによる分析が可能な候補の粒子の同定を進めている.微量希ガス同位体分析が可能な,九州大学大学院理学研究院の岡崎隆司助教の管理している装置を使用する予定である. また,希ガス質量分析計だが,故障個所が多く,未だ装置の立ち上げが終了していない.修理に十分な時間・予算が取れないため立ち上げが大きく滞っていることから,本研究では岡崎研究室にある希ガス質量分析装置を使用させていただく準備を始めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
火成メリライトの探索と分析 NWA6603およびAllende隕石中のCAIを数十個調べたが,候補となるCAIを発見することができなかった.さらに探索は進める予定であるが,予備実験として,二次変性で生成されたNaを含むCAIの電子顕微鏡観察及びSIMS分析を行っている.具体的にはNaを含む鉱物(ネフェリン等)を同定し,SIMS分析を行ってみたのち,希ガス分析を行うというものである.ただし,二次変性鉱物はSIMSでの同位体分析は本研究ではほとんど意味のない分析なので,2-3点測ったのち,希ガス分析のためにそれぞれの鉱物を取り出した. 希ガス質量分析装置の復旧 また,希ガス分析であるが,当初想定していたよりもひどく故障個所が多く,立ち上げに至っていない.故障個所は,主に希ガス精製・分離ラインのターボ分子ポンプ,イオン源の制御電源,およびイオン検出器の電気系,そして,イオン検出器を統括しているモジュール,である.これらを復旧するためには資金が必要であり,本研究費では賄えなかったため復旧が大きく滞っている.現在,粗びきポンプ及び質量分析装置のターボ分子ポンプによる真空排気によって真空を維持し,各モジュール(マグネット・イオン検出器)の動作確認を行った.イオン源は電源が故障しているため動作確認していない.CAIの希ガス同位体分析は現在までに行っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
火成メリライトの探索と分析 昨年度,Allende隕石を購入し,新たに火成メリライト候補CAIを探している.候補CAIが見つかり次第,電子顕微鏡観察およびSIMS分析を行う.SIMS分析に関しては,当研究室のメンバーで発表した,Noriyuki Kawasaki, Shoichi Itoh, Naoya Sakamoto, Hisayoshi Yurimoto (2017) Chronological study of oxygen isotope composition for the solar protoplanetary disk recorded in a fluffy Type A CAI from Vigarano. Geochimica et Cosmochimica Acta 201, 83-102. doi: 10.1016/j.gca.2015.12.031が本研究で行うAl-Mg同位体分析とほぼ同じ分析条件のため,Kawasaki et al. (2017)を参照して分析を行う予定である. 希ガス質量分析装置の復旧 今年度中の復旧は現在の状況を鑑みると不可能なので,他研究室の希ガス質量分析装置を使用させていただいて分析を行う予定である.微量希ガス同位体を分析できる質量分析装置として,九州大学大学院理学研究院の岡崎隆司助教の管理している装置を使用する予定である.岡崎研究室の希ガス質量分析装置は,イトカワ粒子(50 μm以下)の微粒子の希ガス同位体分析にも成功しているので,1μg(粒形~100 μm)程度の分析は十分可能な装置である.
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Causes of Carryover |
使用予定がなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
小額物品を購入する.
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Research Products
(7 results)