2015 Fiscal Year Research-status Report
EXAFSスペクトルの温度変化測定による有害元素化合物の吸着構造の詳細解析
Project/Area Number |
15K17792
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 雅人 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (60648195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | XAFS / 有害元素 / 吸着構造 / 土壌 / ヒ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
有害元素化合物の鉱物への吸着構造は水―鉱物界面における有害元素の分配を決めており、これを決定することは有害元素の環境中における移行挙動の理解につながり重要である。通常の単一温度で測定したEXAFSスペクトルを用いた吸着構造解析では、単座と二座配位などの原子間距離が同程度のものを区別するのは困難である。本研究では、結合の強さによってDebye-Waller(DW)因子の温度依存性が異なることに着目し、種々の温度条件で測定したEXAFSスペクトルの形状変化を量子化学計算に基づく分子動力学(ab initio MD)シミュレーションと併せて解析することで、吸着構造を詳細に決定する手法を確立することを目的としている。 本年度は、主にヒ酸およびメチル有機ヒ素化合物のフェリハイドライトへの吸着構造について研究を行った。大型放射光施設において種々の測定温度でAs K吸収端EXAFS測定を行った。動径構造関数中に現れるヒ素化合物の吸着構造に起因するAs-Feピークの強度は、測定温度が高いほど低くなる傾向が見られた。ジメチルアルソン酸については、単座および二座配位構造に対応する二つのピークが見られ、それらの強度の減少度合は異なっており、本手法によって吸着構造を詳細に決定でき得ることが確認された。 また、ヒ酸の鉄水酸化鉱物への吸着構造モデルを用いて実験と同様の温度条件でab initio MDシミュレーションを行い、As-Fe原子間距離から見積もられたDW因子は、実測のEXAFSスペクトルのAs-FeピークのDW因子と同程度であり、温度依存性について良い相関が見られた。 本手法の土壌への適用を予定しているため、土壌試料についてFeおよびAl K吸収端XAFS測定を行った。特にアルミニウムについては、主な鉱物種が土壌によって異なることが示唆された。次年度以降の土壌試料についての研究に有用な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鉄水酸化鉱物へ吸着させたヒ素化合物について、種々の測定温度におけるEXAFSスペクトルを取得できた。当初の予定よりも計算性能の高い計算機を導入でき、また、より並列計算効率が高い量子化学計算プログラムを導入できたため、本研究を効率的に推進するための並列計算環境を整えることができた。実験と同様の温度条件でab initio MDシミュレーションを実行し、見積もられたDW因子は実験値と良く相関することが確認できたが、理論EXAFSスペクトルを用いた解析手法の確立までには至っていないため、その点でやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄水酸化鉱物に吸着させた試料についてのスペクトルを用いて解析手法の確立を急ぐとともに、アルミニウム水酸化鉱物および土壌への吸着実験およびEXAFS測定を行い、吸着構造の解析を進める。
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Research Products
(5 results)