2017 Fiscal Year Research-status Report
EXAFSスペクトルの温度変化測定による有害元素化合物の吸着構造の詳細解析
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15K17792
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 雅人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60648195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | XAFS / 吸着構造 / 有機ヒ素化合物 / 非晶質アルミニウム水酸化鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機ヒ素化合物の吸着構造を詳細に決定することで、土壌中における吸着過程について詳細に決定することを目的としている。 非晶質アルミノケイ酸塩鉱物であるアロフェンについて、測定温度を変えたAs K吸収端EXAFS測定を行った。その結果、鉄水酸化鉱物であるフェリハイドライと同様に温度依存性が確認された。しかし、フェリハイドライとに比べると、その変化の度合いは小さく、結合の強さが異なることを反映している可能性がある。また、置換基による鉱物への吸着量に及ぼす吸着構造による影響を比較するために、有機ヒ素化合物および無機態であるヒ酸を用いて鉄水酸化鉱物に対する吸着実験を行った。その結果、置換基の数が増えるほど吸着量が減少することが分かった。また、置換基の種類による違いが見られ、同じ置換基数で比較すると、メチル化合物に比べてフェニル化合物の方が吸着量が少なかった。また、吸着量のpH依存性については、ヒ酸および一置換メチル化合物以外は、pH 7付近で急激に吸着量が減少する傾向が見られた。pHによってヒ素化合物の解離状態が異なるのと同時に、鉱物の表面電荷も変わる。従って、置換基の数によって、吸着構造の割合が異なることが示唆された。 非晶質アルミノケイ酸塩のモデルとしてギブサイトの構造を参照にした吸着モデルを作成し、量子化学計算に基づいたMDシミュレーションを行った。鉄水酸化鉱物のモデルのAs-Fe原子間と比較して、平均As-Al原子間距離は短く、実測のEXAFS解析の結果と整合的であった。また、鉄水酸化鉱物のモデルと同様に、Debye-Waller温度依存性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非晶質アルミノケイ酸塩鉱物(アロフェン)へヒ素化合物を吸着させた試料の測定温度を変えたAs K吸収端EXAFS測定を行い、鉄水酸化鉱物と同様に温度依存性を確認できた。また、量子化学計算に基づくMD市ミュラーションをアルミニウム水酸化鉱物のモデルへ適用し、鉄水酸化鉱物と同様に実測と整合的な結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
鉱物へ吸着させた試料のEXAFSスペクトルの再現性を吟味した上で土壌試料への適用を目指す。 引き続き理論EXAFSスペクトルをもちいた実測のスペクトルとの比較・解析を行う。
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Causes of Carryover |
ヒ素化合物を吸着させた試料に対するX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの温度依存性を確認するために、質のよいスペクトルを得る必要がある。現在までに、鉄およびアルミニウム水酸化鉱物試料についての温度依存性は確認できている。しかし、本研究の最終目標である土壌試料については、様々な鉱物組成を持つため、そのXAFSスペクトルの温度依存性をより正確に求めるためには追加の放射光実験が必要であるため。
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Research Products
(3 results)