2015 Fiscal Year Research-status Report
高強度テラヘルツパルス磁場による気相原子の電子スピンに関する超高速制御
Project/Area Number |
15K17806
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
北野 健太 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90586900)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テラヘルツ / スピンフリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高強度テラヘルツパルスの磁場成分を用いて、気相原子のスピン状態に関する超高速制御を実現することを目的としている。特に、アルカリ原子の微細構造を対象として研究を進めている。本年度は、予備実験を行い、以下の成果があった。フェムト秒パルスを光源としたパルス面傾斜法によるテラヘルツパルス光源の開発を完了した。ガスセルをリボンヒーターによって加熱させ、内部の原子密度を吸収分光法によって見積もった。具体的には、市販のルビジウムセルに、中心波長780nmの色素レーザー(5s-5p3/2に共鳴)を照射し、透過光強度をフォトダイオード、およびパワーメータでモニターした。ヒーター温度を200度に設定した際の原子密度は、1E+14/cm3程度と見積もられ、計算と比較的良い一致を得た。次に、780nmと480nmの色素レーザーを同時に照射することによって、リドベルグ原子を生成させ、その原子密度を実験的に評価した。具体的には、780nmの光によって励起された原子からの蛍光をモニターしつつ、480nmの光を照射した際の蛍光強度のディップを観測した。10%程度のディップを観測し、リドベルグ原子の生成効率も同程度と評価できた。本研究のターゲット原子としてナトリウム原子を用いる場合、同原子の3pの微細構造の分裂は0.5THzである。一方、ルビジウム原子の場合、7p,8p,9pの微細構造はそれぞれ、0.7,0.5,0.3THzである。ルビジウム原子の蒸気圧は、例えば280度で比較するとナトリウム原子よりも二桁大きい。そこで、350nm程度の短波長の色素レーザーを用いてルビジウム原子の7p,8p,9p近辺へ励起させることを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、テラヘルツによるスピン制御の原理実証実験を完了する予定であった。テラヘルツ、および可視域のレーザーを透過させ、耐熱性に優れたガスセルの制作に予想以上の時間がかかっているため、当初より若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ルビジウムを封入させた耐熱性の高いガスセルを制作する。可視光、テラヘルツ光の両方について透過性の高いサファイアを素材として用いる。制作したセルを用いて、テラヘルツを用いたスピン制御に関する原理実証実験を行う。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使用したが、最後に購入した光学部品の残額として139円余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の予算に上乗せし使用予定です。今年度の予算計画について大きな変更はありません。
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