2015 Fiscal Year Research-status Report
非貴金属レドックス活性アミノカルコゲノラト錯体によるMeOHの光脱水素化
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15K17834
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松本 剛 中央大学, 理工学部, 助教 (40564109)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | MeOH / 光脱水素 / 非貴金属触媒 / 室温駆動 / ホルムアルデヒド / 光反応 / 水素発生量子収率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非貴金属(Fe2+)とH+及びe-を貯蔵可能な芳香族アミン配位子を含む「室温で駆動するMeOH脱水素化触媒設計」を遂行し、特にMeOHからギ酸への光化学的脱水素化により効率的かつ選択的に水素を取り出す新しいシステム創製を目標として研究を行った。 検討を行った結果、非貴金属(Fe2+)とH+及びe-を貯蔵可能な芳香族アミン配位子からなる金属錯体の合成に成功し、それがMeOHからの光脱水素化反応における触媒活性を示すことが明らかにした。本系は、室温で駆動する分子性の非貴金属系触媒として初の例である。また、興味深いことに、その活性はFe錯体には劣るものの、芳香族アミンおよびその誘導体もMeOHの光脱水素化反応活性を有することを明らかにした。 本反応においては、光化学的に発生したH2と、それに相当するホルムアルデヒド(HCHO)が生成していることを、種々の重水素化実験および活性種捕捉実験、等により明らかにした。またこれらの結果から、本系は従来報告されている貴金属系触媒と比較して、最も高い水素発生量子収率を示すことを明らかにした。従来、分子性触媒を用いたMeOHの脱水素化反応の研究は、含水MeOHを用いたCO2までの脱水素化反応に関する研究が殆どであるが、本系は無水MeOHから水素および、重要な工業原料であるHCHOが得られる光触媒であり、従来例を見ない新しい反応であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、MeOHからギ酸(HCO2H)への効率的脱水素化反応を駆動する非貴金属触媒創生を目的にしている。MeOHからのHCO2Hまたはギ酸メチル(HCO2CH3)の生成量がHCHOに対して少量であるために、改善の余地は残していると言える。しかし、無水MeOHを従来の貴金属触媒を用いた例よりも、高い量子収率でHCHOへ変換可能であるという、当初予想しなかった興味深い新知見が得られている。また、芳香族アミンまたはその誘導体のみでも、Fe(II)錯体よりは活性は劣るものの、同様の触媒活性を示すことを見出した。これらの結果は、エネルギーキャリアとして期待される小分子基質の光触媒的変換反応およびその触媒創生において、芳香族アミンの光有機触媒としての潜在性を見出し、新しいMeOHの光脱水素化反応触媒の新プラットフォームが創出されたことを示す結果であると言える。 これら触媒活性の反応機構に関して理解を深める目的で、錯体触媒の中心金属依存性、芳香族アミンの官能基依存性、芳香族アミンのFe(II)イオンへの配位元素依存性、活性種捕捉実験、重水素化実験、照射光波長依存性、反応温度依存性、原料としてのアルコール依存性、等、に関して検討を行い、それぞれ反応機構理解のための重要な種々の知見が得られている。これらは、触媒活性向上および反応を駆動する励起光波長の長波長化を実現するための触媒設計指針を与える結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り、Fe(II)と芳香族アミンからなるMeOHの光脱水素反応に関して研究を進めると同時に、芳香族アミンの光有機触媒としての可能性を新たに模索する。 先ず、Fe(II)の芳香族アミン錯体を用いた触媒設計に関しては、MeOHからHCHOとH2を与える触媒系を見出してはいるが、HCHO以外にも蟻酸メチル(HCO2CH3)等のHCHOよりも酸化レベルの大きな酸化生成物が得られる触媒設計および反応条件の精査を行う。水素キャリアーとしては、MeOH以外にも、バイオマス由来として得ることが可能なEtOHやアンモニア等も有望な化学種である。したがって、EtOHおよびアンモニア等の小分子基質に関しても検討を行う。 一方、見出したHCHOを与える系においては、Fe(II)以外の金属イオンおよび様々な官能基を有する芳香族アミンを用いた触媒に関して検証を行い、触媒活性(触媒回転数および回転頻度)の改善、および反応を駆動する励起光波長の長波長化を目指す。具体的には、錯体触媒の中心金属依存性、芳香族アミンの官能基依存性、芳香族アミンのFe(II)イオンへの配位元素依存性、等の触媒構造が触媒活性および触媒の安定性(耐久性)、分光学的性質に与える影響を明らかにし、最も高い活性を有し、より低エネルギー光で駆動する反応系の実現を目指す。 また、芳香族アミンおよびその誘導体のみでMeOHの光脱水素化反応を進行する系においては、パイ共役系骨格、アミノ基、水酸基の空間的な配置と触媒活性の相関を検証するとともに、官能基依存性に関しても検討をおこない、光有機触媒として、より高活性、低エネルギー駆動の反応触媒創出を並行してすすめる。
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Causes of Carryover |
当初申請していたマルチチャンネル測光ユニットが、科研費申請時の価格(2,050千円)よりも安く(1,555千円)購入可能であったため、差額分(495千円)発生した。これは必要試薬および備品購入に使用したが、(31,415円)の残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要試薬および備品購入に使用する。
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