2016 Fiscal Year Research-status Report
アップコンバージョンを用いた新規高速フォトクロミック化合物の創出と高機能化
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15K17846
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 洋一 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10722796)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / 二光子過程 / アップコンバージョン / ビラジカル / キノイド / 高励起状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
紫外光照射により着色し、数マイクロ秒から数百ミリ秒で完全消色する架橋型イミダゾール二量体の高速フォトクロミズムは、ホログラム材料や蛍光スイッチ材料など、様々な分野で応用が期待されている。本研究課題では、長波長の光を短波長に変換するアップコンバージョン技術を用いることにより、可視領域の安価な連続光源で高速フォトクロミズムを示す材料を創出し、さらに励起光強度によってフォトクロミズム特性が変わる材料を創出することを目的としている。 平成28年度は、昨年度開発した段階的二光子吸収過程を示すフォトクロミック化合物について、さらなる誘導体探索を行った。その結果、これまでに開発した段階的二光子吸収過程を示すフォトクロミズムでは、強い励起光によって生成する濃青色のキノイド種が4日以上の寿命を持っていた一方、フェノキシル-イミダゾリルラジカル複合体(PIC)を基本骨格に用いることにより、キノイド種の半減期を数秒程度まで高速化することに成功した(J. Am. Chem. Soc., 2017, 139(12), 4452-4461.)。さらに、PICのイミダゾール環を反転させた新しい化合物(RPIC)を開発し、そのフォトクロミック反応過程を明らかにした(J. Phys. Chem. Lett., 2016, 7(16), 3067-3072.)。PICは閉環体と開環体の二種類からなるフォトクロミズムを示した一方、RPICの開環体には二つの準安定過渡種が存在することが分かり、それらは光照射直後にビラジカルが生成し、その後キノイドへと熱平衡状態になることが明らかになった。ビラジカル-キノイド互変異性過程とフォトクロミズムとを組み合わせた複合フォトクロミック反応過程はこれまでに例が少なく、光化学分野の発展において重要であるだけでなく、励起光強度に依存した新しい材料開発においても重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に、ビラジカル-キノイド互変異性による段階的二光子過程を含むフォトクロミック反応系(J. Am. Chem. Soc., 2015, 137(17), 5674-5677.)を開発し、これらは研究計画で構想していた無機ナノ結晶を組み合わせた材料系よりも簡便且つ効率的なアップコンバージョンを実現できたことから、これらの化合物系に関して重点的に研究、開発を行った。 その結果、今年度には、PICを分子骨格とした更なる高速アップコンバージョンフォトクロミックシステムの創出に成功した(J. Am. Chem. Soc., 2017, 139(12), 4452-4461.)。これらの系は、これまでにない新しい高次複合応答過程を含んだ光化学反応系であり、基礎科学的に重要であるだけでなく、機能性材料への展開としても期待できる。特に、非常に弱い光強度で二光子反応誘起できること、また段階的二光子吸収過程が酸素に影響しないことはTTAを用いたシステムと比べて大きな利点となる。平成28年度に二光子反応を効率的に用いたアップコンバージョン分子システムをより拡張し、強度閾値、色、消色速度を改良したことにより、本研究課題の目標の一つである“励起光強度によってフォトクロミズム特性が変わる材料”を実現し、様々な分野に応用することが可能となった。 本研究課題で開発した分子システムは、一光子反応によって誘起されるフォトクロミック反応の熱消色速度や、二光子反応によって生成する複数スピン間の相互作用の強さを分子骨格、及び置換基の導入により調節することにより、色や熱消色速度、光強度閾値など、様々なパラメータを調節することが可能だと考えられる。現在、さらに長波長の可視光を用いた効果的なアップコンバージョン高速フォトクロミック反応システムの構築に向けて、化合物設計や合成、及びそれらの物性測定を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に開発したビラジカル-キノイド互変異性による段階的二光子過程を含むフォトクロミック反応系(J. Am. Chem. Soc., 2017, 139(12), 4452-4461.)、及びビラジカル-キノイド熱平衡過程を含むフォトクロミック反応系(J. Phys. Chem. Lett., 2016, 7(16), 3067-3072.)は、これまでにない新しい高次複合応答過程を含んだ光化学反応系であり、基礎科学だけでなく、材料分野においても重要な設計指針となるものと期待される。また、また、最終年度に実施を予定していたランタニドナノ粒子を用いた系と比べて、レアメタルを使用しない点や、有機化合物の同定が容易であること、また置換基効果などの多様性が高い点で優位性が高い。このことから、これまでに開発したビラジカル-キノイド互変異性や、高励起状態を用いた段階的二光子過程を含むフォトクロミック反応を次年度にも継続して行い、更なる高機能化を目指す予定である。具体例として、一つ目にはビラジカルのスピン相互作用の大きな分子を設計、合成することにより、これまでよりも低い光強度閾値で大幅な物性変化を有するフォトクロミック分子の開発を行う予定である。二つ目には、ポルフィリンの代わりにメロシアニンなどの別の長波長の光を吸収する発色団を高速フォトクロミック分子に連結させることにより、高励起状態からの電子移動を使った高速フォトクロミズムを実現する。それらの開発により、有機フォトクロミック化合物の更なる高機能化を実現できる。また、これらのフォトクロミック化合物とコロイド無機ナノ結晶とを組み合わせた複合光応答システムについても今後検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成29年度4月1日より、所属が青山学院大学理工学部化学・生命科学科から立命館大学生命科学部応用化学科に変更することとなり、研究室立ち上げのための資金が必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
段階的二光子吸収過程を示すフォトクロミック化合物誘導体、及びこれらのフォトクロミック化合物とコロイド無機ナノ結晶とを組み合わせた複合光応答システムを合成するために必要な合成器具を購入する予定である。
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Research Products
(17 results)