2015 Fiscal Year Research-status Report
光応答性界面活性剤を用いたエマルションの解乳化挙動
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15K17847
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高橋 裕 東京理科大学, 工学部, 助教 (90709817)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 界面活性剤 / エマルション / アゾベンゼン / 解乳化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、能動的にマテリアルの性質をコントロールできる刺激応答性マテリアルの新たな利用法としてエマルションの解乳化に着目し、新たな刺激応答性マテリアルの作製およびその現象の発現機構の解明を行い、工業的な応用を目指している。刺激応答として光を用いた光誘導解乳化は、従来の解乳化に考えられる欠点を補えるものと期待される。本年度は、これまでに達成している光応答性のアゾベンゼン基を有するGemini(双子)型界面活性剤を用いた光誘導解乳化の発現機構を界面化学および有機合成化学的な側面から明らかにすることを目的としている。 界面化学的手法は、油/水界面に吸着している界面活性剤が紫外光照射によって収縮することが分かった。これは、光照射によるアゾベンゼン基の構造変化に伴い、油/水界面全体に配向している界面活性剤が一時的な油/水界面の直接的な接触を導くことを示唆している。 有機合成化学的手法では、アゾベンゼン基を有するGemini型界面活性剤の類縁体を合成し、その一部において光誘導解乳化が確認されたことから、Gemini型界面活性剤中のスペーサー部位にアゾベンゼン基を有することが重要であることを明らかにしている。 これらの結果より、紫外光照射による解乳化機構は以下のように考える。界面活性剤中のアゾベンゼン基が光照射による異性化に伴う分子の伸縮によって、一時的な油/水界面の直接的な露出が起こるため、エマルション中の油/水界面にも一時的な露出が油滴間の合一を促進させ、最終的にエマルションの相分離、すなわち解乳化を導くと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでに達成している光誘導解乳化の発現機構の解明を行い、光誘導解乳化の工業的な応用を目的としている。初年度は光誘導解乳化の発現機構の解明を目指しており、現在までにその発現機構を明らかにしていることから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
光誘導解乳化の発現機構を解明し、解乳化に及ぼす重要な因子の解明に成功している。しかしながら、現在の光誘導解乳化には界面活性剤の合成収率が低い、解乳化を達成するための光照射時間が長いといった欠点を有している。一方で、高収率で合成可能なアゾベンゼン基を有する界面活性剤はすでに得られている。今後は、明らかにした発現機構に基づき、高収率で得られる界面活性剤を用いて先述した欠点を改善する系での光誘導解乳化を探索していく。
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Causes of Carryover |
学会発表での費用である旅費を支出する予定であったが、学内予算から支出したために差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度において、実験に必要な物品を購入することで支出する予定である。
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Research Products
(8 results)