2016 Fiscal Year Research-status Report
光応答性界面活性剤を用いたエマルションの解乳化挙動
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15K17847
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高橋 裕 東京理科大学, 工学部工業化学科, 助教 (90709817)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アゾベンゼン修飾界面活性剤 / 光異性化 / エマルション / 解乳化 / 界面張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、能動的にマテリアルの性質をコントロールできる刺激応答性マテリアルの新たな利用法としてエマルションの解乳化に着目し、新たな刺激応答性マテリアルの作製およびその現象の発現機構の解明を行い、工業的な応用を目指している。刺激応答として光を用いた光誘導解乳化は、従来の解乳化に考えられる欠点を補えるものと期待される。本年度は、光誘導解乳化を工業的に応用するために、安価でかつ容易に高収率で合成可能な光応答性界面活性剤を用いた系での光誘導解乳化について検討した。 昨年度に達成した光誘導解乳化に用いた界面活性剤は、安価な試薬のみで合成されたが、総収率が約10%であった。そこで、本年度は安価な試薬のみで合成可能かつ総収率が約60%で合成できた光応答性界面活性剤でエマルションを調製した。このエマルションに紫外光を照射したところ、油と水が完全に相分離、解乳化することを見出した。また、紫外光照射によって油/水の界面張力が上昇することが分かった。界面張力の上昇は、エマルションの界面自由エネルギーの上昇を意味し、油/水の界面積を減少させる、すなわちエマルションが不安定化することを示す。そのため、この光誘導解乳化が紫外線照射による界面張力の増加に伴い、エマルション中の油滴が合一したことに起因することを明らかにしている。 従来の光誘導解乳化では、完全な油と水の相分離に6時間に光照射が必要であった。この時間は実用的なものではなかった。本年度に達成した光誘導解乳化は同スケールにおいて90分間で完全に油と水が相分離した。さらに、マイクロリアクターを用いることで3.5分での光誘導解乳化に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、光応答性界面活性剤を用いることでエマルションの解乳化を光のみで達成し、その工業的な応用を目指している。初年度には当研究室で発見した光誘導解乳化の発現機構を明らかにし、2年目である本年度は、明らかにした光誘導解乳化を実用的なものに近づけるために検討してきた。その結果は、光誘導解乳化の実用化に向けた際の欠点を補うものであり、当初の実験計画に対しておおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに光誘導解乳化の発現機構を明らかにし、その結果に基づき実用化に向けた問題点について改善してきた。さらに実用化のために、解乳化のスケールアップおよびエマルションで用いる油のバリエーションについて検討するとともに、光誘導解乳化による簡便な分離・抽出方法を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、学会発表での費用である旅費および論文の別刷り費用を支出する予定であったが、大学内予算から支出したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度において、実験に必要な物品を購入することで支出する予定である。
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Research Products
(8 results)