2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17850
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
栗原 顕輔 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特任准教授 (80740919)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベシクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本系は人工細胞を構築する上で必要な要素(子孫に伝えていくため情報、自己と他を分ける境界、情報および境界の自己複製に作用する触媒系)のうち、境界と触媒系の生産反応システムを同一の人工細胞内部で作り出すことを目的とした。人工細胞の境界膜として、ベシクルと呼ばれる両親媒性分子が水中で形成する袋状の小胞を用いた。ベシクルを構成する膜分子は、4-デシルアニリンを疎水部位にトリメチルアミンを親水基に持つイミン縮合型分子であり、ベシクル膜にはこの分子の他に余剰の4-デシルアニリンを混合した。 ベシクル型人工細胞の分散液に、イミダゾリウム塩酸塩をもつ水溶性アルデヒド分子を添加した結果、ベシクルに含まれる4-デシルアニリンと脱水縮合を行い、ベシクル膜内で一本鎖型の触媒分子が生成した。時間が経過するにつれて、ベシクル外部のアルデヒド分子の量とベシクル内部の触媒分子生産量が平衡に達した。 次いで、このイミダゾリウム塩酸塩の触媒分子を含むベシクル分散液に、トリメチルアンモニウムの親水部位を持つアルデヒドを添加した結果、ベシクル内部に残存する4-デシルアニリンと反応してベシクル膜分子が生産された。ベシクル膜分子の生産に伴うベシクルの自己生産ダイナミクスが微分干渉顕微鏡でリアルタイムで観察された。 この自己生産ダイナミクスのメカニズムとしてベシクルの外膜に多くの触媒分子が生成されたため、外膜の膜分子が過剰になり弛緩した膜が新しいベシクルを形成したと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、膜分子の生産と触媒分子の生産という二つの生産システムを、同一のベシクルに内包することに成功した。この二つの反応系はアニリンとアルデヒドの脱水縮合という共通の反応システムであり、さらに生成する二つの両親媒性分子はデシルアニリンに由来する共通の疎水性部位をもつ。現在の自己生産ベシクル系では、ベシクル内部のデシルアニリンを過剰にすることで二つの反応系がデシルアニリンを奪い合うという現象は観察されていないが、デシルアニリンや膜分子の量を調整し組成を変化させて平衡に摂動を与えると、本研究の目標である交差触媒システムが実現できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在構築している触媒生成システムを内包する自己生産ベシクルについて、ベシクル膜の組成や構成しているアルキル鎖の鎖長に変化を与えて、平衡に摂動を与えることを考えている。また現在のベシクル調製法は、薄膜膨潤法であるがこれは多重膜のベシクルができやすく、またそのサイズにばらつきがある。摂動を与えて変化を見るためには、ベシクルの調製という初期条件を整えることも考慮する。
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Research Products
(9 results)