2015 Fiscal Year Research-status Report
ドーマント・アクティブ可逆平衡に基づく高効率直接アリール化重合触媒の開発
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15K17855
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
脇岡 正幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (50598844)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 直接的アリール化 / パラジウム触媒 / ホモカップリング / C-H結合切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
パラジウム触媒直接的アリール化重合においてドーマント・アクティブ可逆平衡を誘起し、ホモカップリング欠陥の生成を効果的に抑制する混合配位子系触媒の開発を行った。ジヨードジチエノシロール (DTS-I2) とチエノピロールジオン (TPD-H2) をモノマーとして用いて重合を行い、適切な配位子の組合せを探索した。その結果、P(2-MeOC6H4)3 (L1) に対して P(2-Me2NC6H4)3 やテトラエチレンジアミン (TMEDA) などの共配位子を組合せることにより、ホモカップリング欠陥の少ない (1.0%) 高分子量ポリマー (Mn = 20,000) が得られることが分かった。一方、共配位子を用いず、L1のみを用いて重合を行うと、生成ポリマーには相当量のホモカップリング欠陥 (4.9%) が認められた。このホモカップリングの経路について調べたところ、極めて特異な経路で進行していることが明らかとなった。すなわち、重合初期には、DTS-I基からDTS-H基への還元反応を駆動力として、TPD-H基同士の酸化的カップリング (ホモカップリング: TPD-TPD結合の形成) が進行し、重合後期には、DTS-I基とDTS-H基のカップリング (DTS-DTS結合の形成) が進行していることがわかった。続いて共配位子の効果について調べたところ、DTS-I基の還元反応を効果的に抑制し、その結果、ホモカップリング欠陥の少ない高分子量ポリマーが生成することが明らかとなった。また、配位子として共配位子のみを用いると重合せず、重合の進行にL1は必須であった。すなわち、混合配位子系触媒は、配位子L1が重合を促進し (アクティブ種の形成)、共配位子が副反応を抑制する (ドーマント種の形成) ことで、高度に構造制御されたポリマーの合成を可能にすることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の検討により、パラジウム触媒直接的アリール化重合において、ホモカップリング欠陥の生成を効果的に抑制する混合配位子系触媒の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に開発した混合配位子系触媒の基質適応範囲を調べる。具体的には、これまでクロスカップリング重合により合成されて優れた性能を示すことが知られているものの、従来の直接的アリール化重合触媒では主鎖構造の制御が困難であるようなπ共役系高分子の合成について検討を行う。混合配位子系触媒は、ホモカップリングのみならず、重合の停止反応であるC-X結合の還元を効果的に抑制することを初年度の検討により明らかにしている。したがって、混合配位子系触媒で得られるポリマーは制御された主鎖構造、ならびに、高い分子量を有することが予想される。また、その物性はクロスカップリング重合で得られたポリマーに匹敵する、あるいは、上回ることが期待される。
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