2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17865
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
為末 真吾 新潟大学, 自然科学系, 助教 (10611767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソフトマテリアル / 超分子化学 / 高分子科学 / 自己修復材料 / 自己発言材料 / ヒドロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
自己発言材料の実現に向けて、原料となる化合物の合成、精製のため中圧カラムを購入し、蛍光スペクトル測定のための蛍光分光光度計の購入を行い、実験環境を整えた。これらの研究設備を用いて、原材料となる低分子および高分子を合成した。本年度作製した分子は環状分子を2つ導入した凝集発光色素テトラフェニルエチニレンと、アダマンタン部位を側鎖に修飾したポリアクリル酸である。さらにアダマンタン部位の導入率の異なるポリアクリル酸を複数種合成した。テトラフェニルエチニレンへのシクロデキストリンの修飾方法として反応性と選択性が非常に強いクリック反応を用いた。本年度は2つのシクロデキストリンを持つテトラフェニルエチニレンの合成を行ったが、今後のゲル化能や自己発言性の比較のために4つのシクロデキストリンを持つテトラフェニルエチニレンも同様の手法により合成を行っている。またゲルのメイン骨格として紙おむつなどの吸湿剤として幅広く利用されているポリアクリル酸を利用した。合成によって得られたシクロデキストリン修飾テトラフェニルエチニレンは溶媒や濃度に依存し凝集発光を示した。様々な分子を包接することが可能なシクロデキストリンを有する、この分子単体の分子センサーとしての利用も非常に有意義な研究テーマと考え、ゲル以外の利用も同時進行で行っていきたいと考えている。 また、本研究に関係する口頭発表による学会発表賞受賞1件、論文の投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、凝集発光色素テトラフェニルエチニレンへの環状化合物シクロデキストリンの導入を行った。まずシクロデキストリンの持つ水酸基の一つをトシル基に変換し、その後アジド基に変換した。それとは別にテトラフェニルエチニレンを合成し、ウィリアムソン合成によってプロパルギル基の導入を行った。得られた化合物の両端にはシクロデキストリンが導入されており、これが高分子鎖間をホストゲスト相互作用により架橋することによって3次元編み目構造を形成し、溶液をゲル化させることができると考えられる。今後は4つのシクロデキストリンを導入したテトラフェニルエチニレンの合成も順次行っていく予定である。そしてホストゲスト相互作用は可逆的であるために再びゲルを再形成することが可能である。さらに高分子であるポリアクリル酸へシクロデキストリンの環に包接されやすいアダマンタン部位を導入した。まずアダマンタンカルボン酸にアミド結合によって片末端にBOC保護をしたエチレンジアミンを修飾した。BOC保護を塩酸によって脱保護し、ポリアクリル酸にアミド結合によって修飾した。その際にアダマンタン部位の導入率を3、5%と変更した2種類を合成した。これらの導入率が異なるアダマンタン修飾ポリアクリル酸をシクロデキストリン修飾テトラフェニルエチニレンと混合しヒドロゲルの形成を確認していく予定である。 このように本年度は自己発言材料の原料となる化合物群の合成に成功し、順調に研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成を行った化合物であるシクロデキストリン修飾テトラフェニルエチニレンとアダマンタン修飾ポリアクリル酸を水溶液中で混合することによってヒドロゲルの作製を行う。その際に高分子間の架橋部であるシクロデキストリン修飾テトラフェニルエチニレン、そしてアダマンタン修飾ポリアクリル酸の混合比の違うサンプルを複数種調製し、ゲル強度や蛍光特性を引張試験、圧縮試験、レオロジー測定による貯蔵弾性率、損失弾性率の評価、さらに蛍光分光光度計による蛍光スペクトル測定を行い評価する。次にゲルの自己修復性をゲルを切断し、接着することによって確認する。さらにレオロジーの面からも大きなひずみをかけた後の貯蔵弾性率や損失弾性率の変化から評価する。その際に蛍光強度が変化すること、つまり自己修復によって傷の治りを実際に発言することを写真撮影や蛍光スペクトル測定によって評価する。ここで傷を直接はさみ等で加えるだけでなく、超音波の照射による刺激に対する蛍光強度の変化にも注目して研究を進めていいく予定である。得られた結果を分子構造にフィードバックするとともに、アダマンタン部位やシクロデキストリンの組み合わせ以外の超分子相互作用の利用や、架橋部の構造の柔らかさや長さなどの変更を検討していきたいと考えている。さらに応用研究として本研究プロジェクトで作製したヒドロゲル材料を塗布した材料の工学、医学への応用、例えば人工皮膚などへの利用を産学各方面と共同研究を行うことを検討していきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度の予算と次年度予算を用いて凍結乾燥機を購入するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
凍結乾燥機の購入費用として利用する。
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