2015 Fiscal Year Research-status Report
ビニルモノマーから縮合系高分子の革新的合成プロセスの確立
Project/Area Number |
15K17868
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
松岡 真一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10432288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二量化反応 / N-ヘテロ環状カルベン触媒 / ビニルモノマー / 縮合系高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
重合性モノマーの合成研究は、高分子化学・材料分野における、最も基本的で重要な課題である。しかし、ビニルモノマーとは対照的に、縮合系高分子の原料である二官能性モノマーの種類は非常に限定的である。このことは、ポリエステルやポリアミドに関する研究が活発でないことの主な要因のひとつである。そこで本研究では、各種ビニルモノマー類の二量化反応により非常に多種類の新規二官能性モノマー群を合成する全く新しい方法論を提案する。基本的な化学構造であるがこれまでにない様々なナイロンや脂肪族系ポリエステルの合成経路を確立することで、高性能高分子材料の創製につなげることが期待できる。すなわち、安価なビニルモノマーを原料とし、より高付加価値の縮合系高分子を合成する革新的合成経路を確立し、その有用性を提唱する。初年度において、N-ヘテロ環状カルベンを有機分子触媒として用いることで、様々なマイケル受容体のtail-to-tail二量化反応を達成した。アクリロニトリルやアクリル酸エステル類などの高反応性基質から、ビニルピリジンやイタコン酸ジエステル、メタクリルアミド誘導体、チューリパリン誘導体などα位に様々な置換基のある低反応性基質まで適用可能であった。これらは、金属触媒では二量化反応させることのできない基質であり、有機触媒の官能基耐性の高さを反映した結果となった。いずれの基質においても100-150℃の比較的高温条件が必要であった。いくつかの基質については、アルコールの添加により分子間プロトン移動を加速させ、触媒回転数を増加させることに成功した。また、β位にメチル基が置換したクロトン酸メチルやクロトンニトリルは同条件下においてhead-to-tail二量体を与えることが分かった。中間体を単離することなどで、これらの反応性の違いを反応機構の観点から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビニルモノマーから縮合系高分子を合成するためには、それらの二量化反応を進行させることが鍵となる。今回、非常に広範な基質の二量化反応を進行させることに成功したことは、本研究の目的である多様な構造の縮合系高分子を合成することの基盤となる重要な点であるため、上記の進歩状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
二量化反応の実用化を視野に入れ、添加剤効果により触媒活性のさらなる向上を検討する。また、初年度の良好な結果を踏まえ、反応性官能基を有する基質の二量化反応を調査し、その反応性官能基を二つ有する二量体の合成を検討する。また、得られた二量体の官能基変換によるポリアミドの合成を、またメタクリル酸エステル系の二量体からポリエステルへの変換反応を検討する。
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Causes of Carryover |
合成実験に必要な試薬・溶剤類の消耗品費、測定機器利用料の一部を、学内の競争的資金で賄うことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降も合成実験を中心に進めるため、試薬・溶剤類、ガラス器具、合成実験用補助機材類を購入する費用として使用する。また、質量分析や核磁気共鳴装置などの測定機器利用料も本経費から賄う予定である。
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