2015 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノドットによる“on-off-on”型発光検出系の構築
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15K17874
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
森田 耕太郎 東邦大学, 理学部, 講師 (70396430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カーボンナノドット / センサー / 発光 / 検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンナノドット(CND)の発光挙動とその制御に基づいた”onーoffーon”型発光センサー開発を目的とした基礎検討を進めた。グルタチオンを原料として電気炉加熱分解法によって合成したCND(以下、GSHーCND)の発光挙動に対する種々の溶液条件の効果について検討した。水溶液中に分散したGSHーCNDの発光挙動は、中性領域を含む広いpH(3~10)条件と純水から濃厚な塩濃度条件(0~5mol/dm3)においてもほぼ影響を受けずに発光強度を維持できることが確認された。特に、高い塩濃度条件でも発光強度を維持できることは、生理食塩水(0.6~0.9wt/v%,約0.15mol/dm3)や海水(3wt/v%,約0.6mol/dm3)レベルの塩濃度の試料中での発光挙動観測が期待できる。貴金属ナノ粒子や半導体ナノドットでは塩析効果による沈殿生成が問題となりやすい環境水や生体内などの様々な溶液条件において、GSHーCNDが発光プローブとしての利用において大きなアドバンテージとなるが確認された。 GSHーCND分散液に酸化剤を添加するとGSHーCNDの発光強度が減少することが確認された。比較的強い酸化剤である過マンガン酸イオン(KMnO4ー)と次亜塩素酸イオン(ClOー)において消光効果は顕著であり、より高濃度領域では消光効果はゆるやかとなった。この消光挙動はStern-Volmer型の動的消光メカニズムでは解析できなかったこと、還元剤を追加しても発光強度の回復が見られなかったことから、”onーoffーon”型の発光強度変化としての利用には適していないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
詳細な応答メカニズムについては今後の検討課題ではあるが、酸化剤(KMnO4ー、ClOー)添加によるGSHーCNDの消光挙動は、酸化剤の濃度にして1~5μmol/dm3の範囲ではほぼ直線的に低下した。これに対して、その他の酸化剤(ClO3ーなど)では数mmol/dm3の濃度でも消光応答を示さなかったことから、溶液条件や濃度条件を精査することでKMnO4ーおよびClOーに対する選択的なセンサーとしての利用が可能であると期待される。しかしながら、GSHーCNDの発光挙動制御に基づいた”onーoffーon”型の応答機構の構築を試みたが、有用な条件を確立するには至らなかった。 デンプンを原料として合成したCND(以下、StaーCND)は、銅(II)などの金属イオン共存によって消光応答を示すことが予備検討による明らかとなった。また、金属イオンとCNDの相互作用はCND表面のカルボキシル基と金属イオンとの配位によるとされており、この消光状態は”onーoff”型であること見なすことができる。今後はStaーCNDよりも強く銅(II)に配位する、または、銅(II)を還元する共存物質による発光挙動変化を追跡する。これにより、金属配位性を示す無機陰イオンや還元性を示す生体関連物質の検出へと適用範囲を拡大する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、代表者がこれまでに検討した中で最も合成収率が高く、発光挙動が良好なCNDであるGSHーCNDを中心とした研究を進めた。しかしながら、本年度に得られた結果から、GSHーCNDの発光挙動制御に基づいた”onーoffーon”型の応答機構の構築を試みたが、有用な条件を確立するには至らなかった。GSHーCNDが溶液条件(pH、塩濃度)や共存物質(金属イオン、酸化剤、還元剤)による影響をほとんど受けず、外的要因による発光挙動変化が少ないCNDであることが主たる要因と考えられる。このことから、”onーoffーon”型の応答機構には、外的要因に敏感に発光挙動が変化するCNDを選択する必要があると考えられる。そこで、これまでの予備実験から金属イオンの共存によって発光強度の減少がみられたCNDに着目し、金属イオンおよびpH条件を精査することで、”onーoff”となる消光状態を実現することを喫緊の課題とする。さらに、金属イオンへの配位においてCNDと競合反応を示すと期待される化合物を探索するとともに、”onーoffーon”型の応答機構への展開を試みる。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではカーボンナノドットの合成と精製のためにロータリーエバポレーターと溶媒回収装置の導入を予定していた。しかしながら、初年度の研究結果から、合成したカーボンナノドットは遠心分離操作による精製で、目的の濃度が得られることが判明した。そのため、濃縮操作で使用するロータリーエバポレーターの購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度の研究成果から、発光スペクトル測定で使用する四面透過石英セルの更新が、当初の目算よりも頻繁に必要であることが判明した。そのため、当初の計画通りロータリーエバポレーターの導入を視野に入れつつ、研究の展開によっては、石英セルや遠心分離精製に使用する遠心ろ過デバイスなどの比較的高価な消耗品の購入に充当する。
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Research Products
(12 results)