2016 Fiscal Year Research-status Report
分配型捕集デバイスを用いる半揮発性有機化合物の精密定量分析
Project/Area Number |
15K17875
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
植田 郁生 山梨大学, 総合研究部, 助教 (50598688)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 試料前処理 / ガスクロマトグラフィー / 多環芳香族炭化水素 / 半揮発性有機化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目である平成28年度はまず、マクロ孔シリカ(MPSi)表面にポリジメチルシロキサン(PDMS)を被覆した分配捕集型粒子を開発し、この粒子を小型ガラスカートリッジに充填して新規捕集デバイスを開発した。そして、開発した捕集デバイスの大気中の多環芳香族炭化水素(PAH)に対する捕集および脱離性能をガスクロマトグラフ-質量分析計を用いて定量的に評価した。 MPSi-PDMSは前年度に開発したMPSi-C18粒子を大きく超える捕集力を有しており、具体的にはMPSi粒子の重量に対して40%のPDMSを被覆させた粒子を充填した捕集デバイスを用いることで、3環のPAHを含む空気試料を200 L以上採取しても測定対象試料を99.9%以上捕集させることが可能であった。粒子の表面はPDMSで覆われているため疎水的であり、空気中の水分の吸着が無く、水分が試料前処理やガスクロマトグラフ分析に影響を与えることは無かった。脱離についてもアセトン10 mLと1分間の超音波照射を用いることで、捕集したPAHの99.9%以上を定量的かつ迅速に脱離させることに成功した。また、開発したデバイスを用いてトンネル内空気中のPAHの定量分析にも成功した。 さらに、新規スチレン-ジビニルベンゼン共重合体粒子を捕集剤に用いたデバイスの開発も進めている。新規デバイスはこれまでより格段に捕集力が向上しており、大気中の極微量の半揮発性有機化合物(SVOC)を高感度かつ定量的にに分析する新規分析法の構築が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究予定であったマクロ孔シリカ(MPSi)-ポリジメチルシロキサン(PDMS)粒子を用いた多環芳香族炭化水素(PAH)の分配捕集しついては、PDMS濃度の違いによる捕集力や脱離効率の違いを定量的に評価し、外気温や湿度による影響についても評価を実施した。また、実試料分析への応用も達成した。 さらに、種々の吸着剤について半揮発性有機化合物(SVOC)に対する捕集力および脱離効率を評価した。その中で、新規に開発したスチレン-ジビニルベンゼン(Sty-DVB)共重合体粒子がPAH等のSVOCに対して優れた捕集力と脱離効率を有することを見出した。現在、このSty-DVB粒子を充填した捕集デバイスを開発し、種々のSVOCに対する捕集および脱離効率を定量的に評価するとともに、捕集容器の最適化も実施している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは現在実施している新規スチレン-ジビニルベンゼン(Sty-DVB)共重合体粒子充填捕集デバイスの性能評価を実施する。多環芳香族炭化水素(PAH)やセスキテルペン類、フタル酸エステル類など、種々の半揮発性有機化合物(SVOC)に対する捕集力および脱離効率の評価をガスクロマトグラフー質量分析計を用いて定量的に実施する。 また、カートリッジの形状がSVOCの捕集や脱離に与える影響についても評価し、高い捕集力と少量の溶媒による迅速・定量的な脱離を達成する最適なカートリッジの開発を目指す。
|
Causes of Carryover |
測定装置の無償譲渡により当初計画より物品費を抑えることができた。 また、次年度に種々の形状の捕集カートリッジを作製することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
種々の形状のカートリッジについて検討し、測定対象試料に対する捕集や脱離の効率を評価する。 また、多環芳香族炭化水素のみでなく、フタル酸エステル類についても測定対象を広げて調査する。
|
-
-
-
-
-
[Presentation] 大気中半揮発性有機化合物捕集用デバイスの開発2016
Author(s)
植田 郁生, 鬼形 萌, 藤村 耕次, 芳村 智孝, 鳴上 翔士, 望月 賢, 佐々木 智啓, 前田 恒昭
Organizer
日本分析化学会第65年会
Place of Presentation
北海道大学(北海道・札幌市)
Year and Date
2016-09-14 – 2016-09-16
Invited
-
-
-