2015 Fiscal Year Research-status Report
CAGリピートの過伸長を抑制する低分子リガンドの創成
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15K17885
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 剛史 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教 (80633263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 核酸 / トリプレットリピート |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、ハンチントン病の原因となるd(CAG)nリピートの過伸長を阻害する低分子リガンドの開発を目的とし、平成27年度は1)低分子リガンドの合成と、2)低分子リガンドをもちいたリピート内のC→U変異反応を検討した。 1) 低分子リガンドの合成: 既報のA-Aミスマッチ結合分子であるNAの中央部のアミノ基からC3リンカーを介してチオール基を結合したNA-C3-SHを合成した。また、G-Gミスマッチ結合分子であるNCDからC3からC6までの炭素数の異なるリンカーを介してチオール基を結合したNCD-C(3-6)-SH、C6リンカーを介してアミノオキシ基を有するNCD-C6-ONHを合成した。それぞれのリガンドは、二重鎖融解温度測定から、それぞれA-A、G-Gミスマッチ特異的に強固に結合することを確認した。 2)リピート内のC→U変換反応: NCD-C(3-6)-SHと、G-Gミスマッチを含む二重鎖DNAやG-G, A-A, C-C, U-Uミスマッチを含む二重鎖RNAをチオール系還元剤であるDTT存在下反応させ、C→U変異反応の有無をHPLCとMALDI-TOF-MASSをもちいて確認した。結果、いずれにおいてもC→U変異反応は確認されなかった。しかし、A-A、C-Cミスマッチを有する二重鎖RNAで、RNAを形成するリン酸ジエステル結合が部位特異的に選択的に切断されることを確認した。また、NA-C3-SH、NCD-C6-ONHとG-Gミスマッチを含む二重鎖DNAでは、C→U変異反応や他の反応は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 低分子リガンドの合成: 順調に進行している。: 既知のNAやNCDと、末端に保護されたチオール基を有するアルデヒドとの還元的アミノ化反応によって、異なる長さのアルキルリンカーを介してチオールを有するミスマッチ結合分子を系統立てて合成することが出来た。アミノオキシ基を有するミスマッチ結合分子も同様に合成しようとしたが還元的アミノ化条件下でO-N結合が切断されてしまうことがわかった。そこで、まずヒドロキシ基を有するミスマッチ結合分子を合成した後、それを官能基変換することでアミノオキシ基を有するミスマッチ結合分子も合成することが出来た。 2) リピート内のC→U変換反応: 遅れている。: これまで合成したリガンドではC→U変換反応を確認することは出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目的としたミスマッチ結合分子によるC→U変換反応はこれまで確認できていないものの、NNCD-C3-SHに起因すると見られるミスマッチを有する二重鎖RNAのリン酸ジエステル結合の位置特異的な切断反応を確認した。この結果を踏まえ、NCD-C3-SHに関して、リピートRNAを特異的に切断するリガンドとしての可能性を追求する。過伸長したリピートDNAの転写産物である長鎖リピートRNAは核内で凝集体を形成し毒性を生じることから、長鎖リピートRNAを特異的に切断するリガンドは本研究が目的としたCAGリピートの過伸長を抑制するリガンドと同様に用いることが出来る。具体的にはミスマッチRNA,リピートRNAにNCD-C3-SHを添加し、切断反応をHPLC、ラジオラベリング、次世代シーケンサー等をもちいて調査する。また、RNAの高次構造と切断反応の関係についてもラジオラベリング、次世代シーケンサーなどの手段を用いて調査する。 また、これまで得られた知見を基に、C→U変換反応を誘導するリガンドの開発も引き続き行う。
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Causes of Carryover |
本年度の本研究では、低分子リガンドの有機合成実験・合成DNA・合成RNAをもちいた実験を行った。研究に必要な設備・備品は既に整備されており、本研究の本年度の直接経費は専ら消耗品の購入に充てる予定であったが、特別推進研究の予算でまかなわれたため次年度使用額が生じた。申請者は現在、大阪大学産業科学研究所中谷和彦教授が代表者を務める特別推進研究「リピート結合分子をプローブとしたトリヌクレオチドリピート病の化学生物学研究」の特任助教として雇用されエフォートの60%を費やしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は消耗品として有機合成実験試薬・器具、生化学実験試薬・器具に使用する予定である。特に生化学実験試薬に関しては、本年度の実験成果に従い、予算の必要性が増した高額な合成RNAの購入と、リピートRNAの高次構造解析のために新たに計画した次世代シーケンサーを用いた解析のための、高額な次世代シーケンサー関連の消耗品購入に用いる予定である。
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