2016 Fiscal Year Research-status Report
Development of small molecule ligands to inhibit expansion of CAG trinulceotide repeat
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15K17885
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 剛史 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (80633263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 核酸 / トリプレットリピート / 有機合成 / 低分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、ハンチントン病の原因となるd(CAG)nリピートの過伸長を阻害する低分子リガンドの開発を目的とし、リピート結合分子にチオール基・アミノアルコキシ基等の求核性置換基を結合した新規分子を合成した。シトシン6位への求格攻撃などによってピリミジン環の芳香環性が低下すると、シトシンの4位のアミノ基は加水分解を起こしやすくなることが知られている。また、これまでに開発されたリピート結合分子であるNAはCAGリピート内のA-Aミスマッチと選択的に1:2の当量関係で結合することが分かっており、この時ミスマッチの近傍のシトシン塩基は二重鎖からフリップアウトし求核攻撃等の化学反応を起こしやすくなることも分かっている。これらの知見を基に、合成した新規分子によって、シトシンのフリップアウトと求核性置換基によるシトシン4位の加水分解が進行することを期待した。変換反応がおきればリピートDNAの連続性が失われて重篤な疾患を緩和することが出来る。これまでにNA/NCDにアルカンチオール基を導入した化合物、NCDにアミノアルコキシ基を導入した化合物を系統的に合成する手法を確立している。新規分子はいずれも対応するリピートDNAに強固に結合することを確認した。さらに、合成化合物によるシトシン→ウラシル変換反応の活性を調査した。チオール化合物で求核性置換基に起因すると見られるリン酸ジエステルの切断が若干確認されたが、当初の目的の変換反応はいずれの化合物でも確認出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既知のリピート結合分子であるNAやNCDと、末端に保護されたチオール基を有するアルデヒドとの還元的アミノ化反応によって、異なる長さのアルキルリンカーを介してチオールを有するミスマッチ結合分子NCD-Cn-SH(n = 3 to 6)、NA-C3-SHを系統的に合成することが出来た。アミノアルコキシ基を有するミスマッチ結合分子は、まずヒドロキシ基を有するミスマッチ結合分子を合成した後、ヒドロキシ基の官能基変換によってアミノオキシ基を有するミスマッチ結合分子NCD-C6-ONH2の合成を達成した。 これより後は、主にNCD-Cn-SHについての検討を行った。NCD-Cn-SHの場合、シトシン6位への求格攻撃の競合反応はNCD-Cn-SH自身の酸化反応による二量体化である。そこで、チオール化合物の水溶液中での酸化速度を調査した。結果予期していたよりも酸化速度は早く、中性・室温条件で24時間後ほぼジスルフィド体に酸化することが分かった。そこで、各種還元剤を検討し、TCEP共存下では長期にチオール体のまま存在することを明らかにした。次に、NCD-Cn-SHのリピートDNAとの結合を、CSI-TOF-MASSにより調査した。結果NCD-Cn-SHはDNA中のG-Gミスマッチ部位に特異的に、リガンド:DNA=2:1の化学量論で結合することが分かった。次に、還元剤条件下NCD-Cn-SH をもちいてC→U変換反応を検討した。しかしながら、変換反応を確認することは出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの所、チオール基を導入したミスマッチ結合分子に関してはミスマッチ部位への特異的な結合が見られるもののシトシン塩基への求格攻撃は確認出来ていない。シトシン6位への求格攻撃は、天然ではシトシンDNAメチルトランスフェラーゼによるシトシンメチル化において鍵反応として起きていることが知られている。この時、シトシンの6位を攻撃する求核種は、システイン残基のチオール基であり、これを参考に申請者はNCD-Cn-SHをデザインした。しかしながらNCD-Cn-SHのアルカンチオール基は、中性では活性なチオレートイオンとしてほぼ存在していないことが、文献調査やpKa予測ソフトEpikなどをもちいて明らかになった。これらの調査よりNCD-Cn-SHのpKaは、およそ10程度と予測している。そこで、より中性でチオレート化する芳香族チオールを求核性置換基として導入する予定である。また、シトシン6位への求格攻撃と協同的にシトシン3位の環内アミノ基を活性化することを目的に、酸性置換基の導入や酸性条件での反応検討も併せて行う。
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Causes of Carryover |
本年度の直接経費は専ら、有機合成実験・合成DNA・合成RNAなどの消耗品の購入に充てる予定であったが、申請者が雇用されている特別推進研究の予算でその多くが賄われたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は消耗品として有機合成実験試薬・器具、生化学実験試薬・器具に使用する予定である。特に生化学実験試薬に関しては、本年度の実験成果に従い、予算の必要性が増した高額な合成RNAの購入とに用いる予定である。
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Research Products
(1 results)