2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17895
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶺岸 耕 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40512992)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水素 / 太陽光 / 水分解 / カルコゲナイド / カルコパイライト / エネルギーキャリア / 薄膜 / 表面修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「近赤外光応答水分解光電極の開発」においてはバンドギャップが小さく、近赤外光に対する光応答を有する半導体光電極を用いて水分解反応を検討している。今年度はCuInSe2という材料を主な対象とし、i)高品質薄膜作製の検討、ii)多層構造化による電荷分離促進、iii)Pt等の水素生成助触媒の担持、を行うことにより紫外~可視~近赤外光を利用した効率的な水分解の検討を行った。 様々なIn /(Cu+In)比の電極を作製して検討したところIn /(Cu+In)< 0.50では、比較的大きな粒径を有する一方、光応答を示さなかった。In /(Cu+In)比が小さいほどSe /(Cu+In)比が小さい傾向がみられたことからCu2Seが多く形成してしまったと考えられる。光カソード電流はIn /(Cu+In)> 0.50の組成で得られたが、In /(Cu+In)比が大きいほどオンセット電位は低下し、光アノード応答が現れた。最適の組成と結論したIn /(Cu+In)= 0.57の試料に対してCdS層を用いて多層構造化、さらにPtを退席することによって水素生成反応の過電圧を低減したPt/CdS/Cu0.98In1.28Se2電極が0 V vs. RHEにおいて5.5 mA cm-2と最も大きな光カソード電流を示した。この電極に各波長の単色光を照射した結果、波長 1200 nmまでの光に対して明瞭なカソード応答が観測され、水からの水素生成にこの長波長の光を利用可能であることを実証した。Inを一部Gaに置き換えたCu0.98In1.21Ga0.05Se2を作製し、上記同様に表面修飾を施したところ1200 nmと長波長の光に応答し、かつオンセット電位が0.7 V vs. RHEと比較的高いものが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究「近赤外光応答水分解光電極の開発」においては近赤外光まで利用した水分解反応用光電極の可能性を実証することを目的とし、バンドギャップが小さく近赤外光に対する光応答を有する半導体光電極を用いた水分解反応を検討している。【研究実績の概要】の部分で述べた通り、今年度はCuInSe2という材料を主な対象とし、i)高品質薄膜作製の検討、ii)多層構造化による電荷分離促進、iii)Pt等の水素生成助触媒の担持、を行うことにより紫外~可視~近赤外光を利用した効率的な水分解の検討を行った。結果、CdS層を用いて多層構造化、電化分離を促進し、さらにPtによって水素生成反応の過電圧を低減したPt/CdS/Cu0.98In1.28Se2薄膜電極が疑似太陽光照射下、0 V vs. RHEにおいて5.5 mA cm-2と比較的大きな光カソード電流を示した。この電極に各波長の単色光を照射した結果、波長1200 nmまでの光に対して明瞭なカソード応答が観測された。さらに、Inを一部Gaに置き換えたCu0.98In1.21Ga0.05Se2を作製し表面修飾を施したところ、吸収端波長は約1200 nmと長波長であり、かつ光応答のオンセット電位が0.7 V vs. RHEと比較的高いものが得られている。以上より、「紫外~可視~近赤外域の光を効率よく利用した水素生成反応系を構築する」という目的はほぼ達成された。このほか、近赤外域の光を利用可能な水素生成光電極材料をいくつか見出しており、それらの検討も行っている。次年度はより効率的な近赤外域の光の利用に向けて特に表面修飾や反応メカニズム、新規材料の検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに約1200 nmと非常に長波長な光まで水素生成反応に利用可のであることを実証できた。次年度はより効率的な近赤外域の光の利用に向けて特に表面修飾や反応メカニズム、新規材料の検討を行うことにより、優位な太陽エネルギー変換効率を得ることに取り組んでいく。具体的には1)新規材料開発のみならず、2)半導体デバイスシミュレーションを駆使して近赤外光応答光電極内部でのキャリアのふるまいを考察し、3)それを制御できる電極構造、例えば深さ方向に向かって組成プロファイルを形成、あるいは電極表面に多層構造を作りつけるなどしてより効率的な電子の取り出しを実現する。また、4)光励起電子が効率的に水素生成サイトへ注入され、かつ効率的に反応が進行される新規表面修飾法の開発にも取り組む。以上の取り組みを通してエネルギーの小さな長波長の光を効率的に水素生成に利用する指針を示すことを目指す。
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[Journal Article] Crystal Structure, Electronic Structure, and Photocatalytic Activity of Oxysulfides: La2Ta2ZrS2O8, La2Ta2TiS2O8, and La2Nb2TiS2O82016
Author(s)
Goto, Yosuke; Seo, Jeongsuk; Kumamoto, Kazunori; Hisatomi, Takashi; Mizuguchi, Yoshikazu; Kamihara, Yoichi
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: 55
Pages: 3674-3679
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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