2015 Fiscal Year Research-status Report
モノリス型柔軟マクロ多孔体の細孔・表面物性制御と応用
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15K17909
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早瀬 元 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (70750454)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多孔体 / 有機-無機ハイブリッド / ナノファイバー / 材料化学 / ゾル-ゲル / 相分離 / シリコーン / 撥液性 |
Outline of Annual Research Achievements |
さまざまな有機官能基をもつケイ素アルコキシドを単量体(モノマー)として、界面活性剤やナノファイバーなどが共存した溶媒中でゾル-ゲル反応を行うことで、細孔・骨格構造が制御されたシリコーン組成モノリス型マクロ多孔体の作製を試みた。モノリス型マクロ多孔体作製の難点としてはスケールアップに伴い洗浄プロセスや乾燥プロセスが複雑化する問題が存在しているため、できるだけ簡易な合成法の確立を意識して課題に取り組んだ。 水系、有機系、それらにポリマーを添加した系などさまざまな溶媒条件での合成を検討したところ、これまで報告されていない合成プロセスを複数見つけることができた。その中でも簡易手法であると判断した、ベーマイト(アルミニウム酸化水酸化物)ナノファイバー分散液中でのゾル-ゲル反応を利用したモノリス型マクロ多孔体作製に重点的に取り組んだ。この系において単一のケイ素アルコキシド(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなど)を前駆体に用いて材料作製を行ったところ、一軸方向に対して柔軟性をもつモノリス体を得ることができた。この材料はナノファイバー上にシリコーンが被覆された数十ナノメートルの太さの棒状骨格をもち、これまで多く報告されてきたマクロ多孔体とは異なる構造であることがわかった。常圧乾燥でもクラックフリーのモノリス体が得られ、数百ミリリットルスケールまで作製に成功している。 得られた材料についてはバルク特性や切断面における表面機能を評価し、撥水、断熱など応用に関する可能性を探った。この材料は疎水性が高いシリコーンで覆われたファイバー状骨格をもつことから高い撥水性を示し、簡易な条件で実現できる低真空において従来のエアロゲル並の断熱性を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に示したとおり、単一のケイ素アルコキシドを前駆体に用いたシリコーン組成モノリス型マクロ多孔体作製の新手法の開発を行い一定の結果を得ることができたことから、研究はおおむね順調に進展したといえる。ナノファイバーを用いた多孔体形成の研究は前例が少なく、今回の成果は骨格・細孔構造制御手法の拡大や機能性材料の開発において発展が期待できる。この作製手法は最終的に洗浄除去が必要な界面活性剤の添加が不要である点もメリットであり、今後のモノリス型多孔体開発においてプロセス簡略化やスケールアップのヒントになると考えられる。ベーマイト以外の組成をもつナノファイバーや微粒子の分散体を用いた多孔体作製も順次試みているが、同様の方法では多孔体が未だ得られていない。そもそも、ベーマイトナノファイバーが関与する微細構造形成過程の支配的要因が、ナノファイバー表面での化学反応によるものか濡れなど物理的挙動によるものかが判断できていない。決定的な分析方法が存在せず、解明には時間を要する。 同時に取り組んでいた、複数種のケイ素アルコキシドを前駆体に用いた柔軟多孔体(マシュマロゲル)に関する研究においては、精密な表面物性制御や応用評価について細かい進展があるのみで、飛躍的な結果は得られなかった。合成・表面修飾条件の詳細検討や得られた材料の生かし方の探索が引き続き重要な研究課題になると考えられる。生体材料等への応用などいくらかの用途に関しては確かな手がかりを掴むことができたため、今後発展する見込みがある。
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Strategy for Future Research Activity |
無機ナノファイバーを相分離制御に用いた、モノリス型マクロ多孔体作製に取り組む。金属酸化物粉末の水熱処理により作製される無機ナノファイバーや簡易に合成可能なナノストランドがこれまでさまざまな組成で報告されているため、これらを安定分散させる手法を模索し、シリコーンやその他有機ポリマー組成の新たな構造体作製を試みる。また逆に、無機ナノファイバーの凝集条件を明らかにすることで、ナノファイバーを主組成とするモノリス型マクロ多孔体の作製にも挑む。これまで液相中での構造形成(ゲル化)を経て作製される低密度ナノファイバー多孔体は、乾燥過程において毛管力による収縮や崩壊など微細構造変化を避けるために特殊なプロセス(凍結乾燥や超臨界乾燥)を必要としていたが、最終生成物がもつ物性、特に光学特性を極力損なわないでモノリス型多孔体を得る代替プロセスの探索を行う。 マシュマロゲルの研究においては、発泡体よりも小さな細孔径とスケールアップの容易性、モノリス体としての高い柔軟性を生かした応用研究に取り組む。特に生体材料等への応用を模索する。昨今、各種材料の細胞培地としての応用研究が盛んになっているが、マシュマロゲルは生体適合性が高く、柔軟性を生かした新しい用途における応用可能性が考えられる。また、ヒドロシリル化を用いてさまざまなケイ素アルコキシドを合成し、柔軟な構造を与えやすいケイ素アルコキシド単量体の探索や合成手法の確立など、基礎的な研究にも取り組む。
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Research Products
(7 results)