2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞内環境を認識する多刺激応答性ゲル微粒子によるナノトランスポーターの創製
Project/Area Number |
15K17912
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
河村 暁文 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (50612579)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 刺激応答性ゲル微粒子 / pH応答性 / 還元環境応答性 / ソープフリー乳化重合 / ドキソルビシン / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内環境を認識して薬物を放出するナノトランスポーターの創製を目的として,本年度は,酸性かつ還元環境において大きく膨潤するゲル微粒子の設計・合成と,その刺激応答性について検討した。まず,還元環境によって切断されるジスルフィド結合を有する架橋剤を合成し,これを用いたソープフリー乳化重合法の重合条件を最適化することで,粒径が200 nm程度のゲル微粒子の合成法を確立した。動的光散乱測定によりこのゲル微粒子のpHおよび還元環境応答性を評価したところ,酸性条件下ではゲル微粒子の膨潤率がわずかしか増加しなかったのに対して,酸性かつ還元環境下においてゲル微粒子の膨潤率が劇的に増加することが明らかになった。 次に,ゲル微粒子を添加した際のマウス線維芽細胞(L929)の細胞生存率をWST-8アッセイにより評価したところ,ネガティブコントロールであるドデシル硫酸ナトリウムと比較して高い細胞生存率を示し,ゲル微粒子は比較的毒性が低いことがわかった。また,モデル薬物として細胞膜を染色する蛍光色素であるDiIをゲル微粒子に内包させ,その細胞取り込みを評価した。その結果,フリーのDiIは細胞膜を染色したのに対して,ゲル微粒子に内包されたDiIでは細胞膜は染色されず,細胞質内からDiIの蛍光が観測された。この結果から,ゲル微粒子は細胞質に取り込まれることが明らかになった。さらに,疎水性薬物であるドキソルビシンのゲル微粒子への内包にも成功し,酸性かつ還元環境下でドキソルビシンの放出が有意に増加することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソープフリー乳化重合による二重刺激応答性ゲル微粒子の合成法を確立でき,得られたゲル微粒子が酸性かつ還元環境下において膨潤率が劇的に増加することを明らかにした。また,比較的細胞毒性の低いゲル微粒子の組成も明らかになり,当初の予定より若干早めにナノトランスポーターとして使用可能なゲル微粒子の組成および合成法を確立することができた。その結果,ゲル微粒子内部への疎水性薬物の内包とその刺激に応答した放出について検討ができた。今後は,標的マイクロRNAのアンチセンス鎖の内包とその放出などに着手することができる。このような状況からほぼ順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究により,比較的細胞毒性が低く,酸性かつ還元環境において劇的に膨潤する二重刺激応答性ゲル微粒子の合成法を確立できた。そこで,平成28年度はガンにより発現が増加するマイクロRNA(miR-21)のアンチセンス鎖を有するオリゴ核酸などの薬物を粒子内に導入し,その細胞内放出について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定では,ソープフリー乳化重合による二重刺激応答性ゲル微粒子の合成法の確立に時間と試薬を要することが予想されていたが,予定よりも若干早く合成法が確立したため,4万円弱の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に使用する予定の研究費は,主にゲル微粒子内へのアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖の導入とその放出や細胞内動態に関する評価を行うための試薬や測定キットなどに用いる。また,研究が順調に進展していることから,国内学会や海外での学会発表を積極的に行うための旅費としても使用する。さらに得られた研究成果を論文としてまとめて投稿するためにも研究費を使用する。
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Research Products
(13 results)