2015 Fiscal Year Research-status Report
レジリンモデルポリペプチドから成る超弾性繊維の創製及び機能制御
Project/Area Number |
15K17913
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福岡 徳馬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (90415737)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 蛋白質 / 弾性繊維 / バイオベース材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、昆虫の外骨格を形成する超高弾性タンパク質の一種である「レジリン」をモデルとした人工ポリペプチドを設計・合成し、ペプチド鎖中のチロシン残基の酸化カップリングにより構造・機能を制御した超高性能バイオエラストマーの創製に取り組む。 平成27年度は、(1)レジリンモデルポリペプチド発現用プラスミドの設計・構築、(2)大腸菌発現系を用いた目的ポリペプチドの生産条件検討を行った。レジリンには代表的な繰り返しアミノ酸配列が報告されており、キイロショウジョウバエ由来レジリンのExon Iドメイン(GGRPSDSYGAPGGGN)とExon IIIドメイン(GYSGGRPGGQDLG)、ガンビエハマダラカ由来レジリンの配列(AQTPSSQYGAP)等が知られている。これら3種類のアミノ酸配列をコードするDNA塩基配列を設計し、遺伝子工学的手法によりこれらが16回繰り返されるDNA断片、及び各々が8回ずつ繰り返された配列が連結したハイブリッド体のDNA断片の構築に成功した。得られたDNA断片を搭載したプラスミドを大腸菌に導入し、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)でこれらの遺伝子を発現誘導することで目的ポリペプチドの生産培養試験を行った。 試験の結果、IPTG添加の有無で大腸菌の増殖挙動が大きく変化することが観察され、何らかの遺伝子発現が行われていることが確認されたが、今のところ目的ポリペプチドを十分量生産させるには至っておらず、更なる生産条件の検討を進める必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レジリンに繰り返される3種類の代表的なアミノ酸配列をコードするDNA塩基配列に関して、当初の計画通りこれらが16回繰り返されるDNA断片の合成に成功したほか、各々が8回ずつ繰り返された配列が連結したハイブリッド体のDNA断片を構築できた点で、計画以上の研究成果が得られた。一方、目的ポリペプチドを十分な量得るための生産条件の最適化には未だ至っていない点で、今後の更なる検討が必要である。 以上、一進一退の状況から、本課題の進捗状況としては概ね計画通りと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
目的のアミノ酸配列をコードするDNA断片は既に得られており、今後はまず優先して目的ポリペプチドの生産条件の最適化に注力する。宿主、ベクターを変えるなど、遺伝子の過剰発現を促進させる方法を、分子生物学に精通した研究協力者と議論しながら進める予定である。
|
Causes of Carryover |
当初計画では研究補助員の雇用を予定していたが、卒業研究を行う東京理科大学の学部四年生を外研生として受け入れ、研究指導を行い、本研究課題の一部を卒業研究のテーマとして実施することができたため、雇用を見合わせた。次年度は、ポリペプチドの調製に加え、得られたポリペプチドからフィルムやゲルを作製し、物性評価を行うなど、さらにトライ&エラーを繰り返す作業が増える予定であることから、本年度予定していた人件費を意図的に次年度に繰り越すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の通り、次年度では繰り返し作業の必要な実験が増える予定であるため、加速度的に研究を進展させるべく研究補助員を雇用する予定である。
|