2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ界面を内包するペロブスカイト関連化合物を用いた酸素還元電極の創製
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15K17916
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松井 敏明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90378802)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 燃料電池 / ヘテロ界面 / 酸素還元電極触媒 / ペロブスカイト関連化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体酸化物形燃料電池の酸素還元反応の大幅な過電圧低減を目指して、新規なカソード触媒の開発に取り組んだ。 本年度は、酸素還元の活性向上に効果のあるABO3/A2BO4ヘテロ界面系の探索を目的として、電子-酸化物イオン混合伝導性を有する(Sm,Sr)CoO3に着目し、その関連化合物である(Sm,Sr)2CoO4と形成するヘテロ界面が空気極性能に与える影響を評価した。(Sm,Sr)CoO3と(Sm,Sr)2CoO4の混合比が異なる(Sr,Sm)CoO3/(Sr,Sm)2CoO4系電極を用いて対称セルを作製し、界面導電率を比較したところ、(Sm,Sr)CoO3:(Sm,Sr)2CoO4 = 80:20 wt.%の電極が最も高い性能を示した。また、閉鎖循環系装置内で同位体酸素交換実験を行い、各電極の表面交換反応係数(k)およびバルク拡散係数(D)を算出した。その結果、(Sm,Sr)CoO3単体よりも上述の電極((Sm,Sr)CoO3:(Sm,Sr)2CoO4 = 80:20 wt.%)の方がk値が大きく、ヘテロ界面の導入により酸素表面交換反応が促進されていることが明らかとなった。一方で複合体電極ではD値が減少しており、(Sm,Sr)2CoO4相により酸化物イオンのバルク拡散が阻害されていることが示された。以上の結果から、適切な混合比でヘテロ界面を導入することで、酸素表面交換反応を促し、電極反応過電圧を低減することが本系でも可能であることを明らかにした。 また、電極系内にペロブスカイト類似構造とペロブスカイト型構造の二相共存状態をつくることを目的として、PrBaFe2O6(ABO3型)/PrBaFe2O5+δ (AA’B2O5+δ型)系の検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ABO3/A2BO4ヘテロ界面系の検討では、本年度目標としていた項目をおおよそ達成できた。ただし、電極の表面交換反応係数やバルク拡散係数などの物性値は、試料の調製法や測定法で変動する可能性があることから、次年度も別の計測手法で詳細に検討する。また、その他のペロブスカイト型構造/ペロブスカイト類似構造の二相共存系電極の開発は、PrBaFe2O6/PrBaFe2O5+δ系の検討に着手したばかりであるが、一連の評価手法は既に確立しているので、今後の展開に支障はないと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
(Sr,Sm)CoO3/(Sr,Sm)2CoO4系電極の検討では、表面交換反応係数およびバルク拡散係数を他の手法を用いて計測し、データの信頼性を向上させると共に反応活性向上の根拠を明確にする。PrBaFe2O6/PrBaFe2O5+δ系電極では、二相共存の境界を明らかにし、電気化学特性や表面酸素交換反応速度の解析を継続して実施する。また、上記の研究事項がスムーズに展開すれば当初の計画通り、アニオン交換膜形燃料電池でもペロブスカイト関連化合物を初期ターゲットとして電気化学的酸素還元活性の評価を行い、カソードの設計指針を得る。
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