2016 Fiscal Year Research-status Report
生体を再生する新規透明バイオマテリアルの高機能化と再生医療加速化への挑戦
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15K17919
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
川越 大輔 小山工業高等専門学校, 物質工学科, 講師 (80420008)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アパタイト / 透明体 / スキャホールド / バイオセラミックス / 細胞観察 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療への期待は非常に大きい。その実現には、増殖因子・細胞・足場(スキャホールド)の三つが必要で、材料の立場からは細胞活動に適した足場の研究をすすめる必要がある。培養で用いた細胞や細胞がつくりだした組織等と一緒にスキャホールドを生体内へ入れることができれば理想的である。このことから、骨に関する再生医療の材料候補としては、生体骨の無機主成分である水酸アパタイト(HA)が有用である。 現在、細胞試験に用いられているHAは不透明であり、細胞試験において非常に重要な生きた細胞を用いた観察や評価検討をすることができていない。申請者等はHAの透明な焼結体を作製することで、生きた細胞による細胞挙動の検討ができること、また、ち密体であることから気孔率等の材料形状の影響を一定とできること、を報告してきた。しかし、HA透明焼結体の作製には、熱間等方加圧成形や放電プラズマ焼結などの特殊な装置が必要であることから、これらの方法により作製されたHA透明焼結体を利用した細胞研究は数例に留まっている。 以上から、本研究では微粒子合成や得られたHA粒子の微細化、有機物との複合化等により、簡易にHAの透明体を作製することを試みた。 28年度は、得られたHA透明成形体上で、位相差顕微鏡を用いた生きた細胞のリアルタイム観察を行うことができ、MC3T3-E1細胞がHA透明成形体に接着し、増殖していることが確認できた。しかし、作製したHA透明体の表面状態は比較となるポリスチレンディッシュに比べて粗く、今後詳細な細胞観察を行うためには、HA粒子の粉末状態や成形方法等を検討し、より均一な表面状態とする必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に計画していた外部機関(産総研等)での細胞試験の実施に比べて、所属施設にて細胞試験が行えるようインキュベーターなどの物品購入や細胞の入手、細胞取り扱いの技術習得等ができたことで、予定よりもかなり多くのHA透明成形体上での細胞試験の評価・検討ができた。しかし、従来の透明な焼結体では問題とならなかった試料表面の粗さが、今回作製した透明な成形体では課題となっており、目的としていた生きた細胞のリアルタイム観察を行うためには、当初の予定よりもかなり多くの透明成形体の作製と細胞試験を行う必要が生じ、より表面が滑らかで観察しやすい成形体作製の試行錯誤が必要であった。現在のところは、実験回数を増やし成形体を多く作製することで、生きた細胞を観察可能な成形体数を満たしているが、今後は粒子の凝集・分散状態の制御、成形における乾燥時間や温度の制御等により、表面状態が平滑・均一で細胞を容易に観察できる透明な成形体の作製を行っていく必要があると考えている。 また、透明化するHA粒子を出発粉末とする放電プラズマ焼結については、FT-IR測定で洗浄除去の確認ができたHA粉末においても、有機物が原因と思える焼結体の黒色化が起こっており、今後の検討として洗浄によるさらなる除去や放電プラズマ焼結時の加熱条件による除去などを検討していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に課題となった残存する有機物については、洗浄で有機物を除去したHA粒子や放電プラズマ焼結時の焼結条件の検討等により、従来の処理をしていない粉末からの焼結体よりも、低温度・短時間でのち密化を検討する。 また、透明化するHA粒子において重要となる分散剤添加の検討を行う。ここでは、粒子の分散の指標となるゼーター電位の測定や、ナノオーダーでの粒度分布による評価を行い、透明化等に最適な粒子状態の条件を検討する。 この分散剤の添加で得られた粉末を冷間等方加圧成形等で成形することで、28年度までの成形体と比べて、より高強度で高機能な成形体の作製を検討する。 今までに得られた結果をもとに、水酸アパタイトだけでなく、生体親和性が高く、さらに生体吸収性のあるβ-リン酸三カルシウム等の他のリン酸カルシウムへの粒子制御条件の展開を検討する。 最後に、得られたリン酸カルシウム粉末と他の生体金属材料との複合化を、放電プラズマ焼結法などを利用して検討し、従来に比べて、高機能なバイオセラミックス-バイオメタルの複合材料の作製を検討する。
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Causes of Carryover |
HA粉末に残存する有機物が確認されたため、28年度に予定していた回数の放電プラズマ焼結を行うことができなかった。このため、放電プラズマ焼結型わく消耗品費による次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
HA粉末の有機物等の除去を検討した後、28年度に予定していた放電プラズマ焼結を29年度に実施する。次年度使用額は、放電プラズマ焼結に必要な型わく等に利用する。
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