2015 Fiscal Year Research-status Report
FCC結晶構造に起因する界面強度局所変動の定量評価
Project/Area Number |
15K17936
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
宍戸 信之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00570235)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異種材界面 / 塑性変形 / 強度 / 単結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
極端に微細化・高密度化された先進エレクトロニクスデバイスにおいては、従前の機械的信頼性設計手法では予測不能な破壊事例を生じるケースもあり、そのメカニズムの把握が高信頼設計の鍵となる。本研究は、マイクロ・ナノスケールの界面破壊現象について、その局所強度を支配する主因子の抽出を目的とする。平成27年度は界面剥離時の系全体の変形ならびに各種エネルギーを適切に評価するために、その局所的な界面強度評価に先んじて、微小な結晶性材料の局所的な塑性変形を正しく把握することを目的とした試験評価をおこなった。特に、界面強度評価用に作製された微小試験片の塑性変形挙動は他のバルク材などの挙動と異なることが予測されるため、任意形状、寸法における塑性特性の定量予測を目指した。 単一のすべり系に主たるせん断応力が生じるように設計された半円弧形状の銅単結晶試験片を作成し、その構造寸法と塑性変形挙動との相関性を調査した。特に、透過電子顕微鏡観察によって材料内部の転位密度を評価することで、転位のすべり運動に端を発する材料の降伏現象が、転位密度から予測される転位源間隔程度の空間スケールにおける応力分布の影響を受け、それが単結晶材料の塑性変形挙動における寸法効果として現れることを示唆する結果を得た。これによって、次年度以降に実施される界面強度試験においても、任意の形状、寸法における塑性挙動を予測することができ、直接計測によって得られた界面構造体の変形と前述の塑性特性により評価された変形および系の各種エネルギーとの定量的な比較検討が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は界面剥離時の系全体の変形ならびに各種エネルギーを適切に評価するために、その局所的な界面強度評価に先んじて、微小な結晶性材料の局所的な塑性変形を正しく把握することを目的とした試験評価をおこなった。得られた試験結果が当初予想していた結果ほど単純な挙動ではなかったことから、その分析・追証に時間を要し、予定していた界面強度評価まで至らなかった。しかしながら、得られた知見は本研究対象である界面破壊現象をより深く理解する一助となるのみならず、マイクロ・ナノスケール構造体の機械的信頼性を議論する上で欠くことのできない性質のものである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度である平成28年度は、銅材からなる界面構造体の強度と局所変形の相関性について調査を継続する。ただし、初年度の成果により、銅単結晶材はその転位密度と内部の局所応力分布でその塑性変形挙動が予測できる可能性を示唆した。したがって同一すべり系からなるFCC材料はいずれも同様の結果になると予想し、今後は銅からなる界面構造体のみ評価対象として限定し、当初の目的を達成することを目指す。
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Causes of Carryover |
初年度では、単結晶銅単体の塑性挙動評価に注力し、界面構造体の作製を次年度に遅らせることとしたため、材料購入および試験片作製プロセスにかかる諸費用が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度からの未使用分は遅れている試験片製作費とする。一方で、今後の研究推進方策でも言及したように、初年度で得られた知見を踏まえて当初目的達成に必要な試験片のバリエーションを減らすことが可能と判断した。この削減部分は、初年度の研究によって副次的に得られた成果の学会発表および論文投稿料として充当する。
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