2015 Fiscal Year Research-status Report
室温から極低温に渡るナノ~マイクロ薄膜の音速・屈折率・膜厚同時計測法の確立
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15K17938
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長久保 白 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70751113)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 弾性率 / 屈折率 / 温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は室温から極低温においてダイヤモンドの弾性定数の計測とシリコンの屈折率を正確に計測することに成功した。本研究ではピコ秒超音波法のみを用いることによって誘電体・圧電体の音速と屈折率を同時に計測する手法の確立を目指している。そのためにはまず音速や屈折率の温度依存性が既知の材料に対して計測を行うことでこの手法の妥当性を評価する必要がある。上述の成果は今後、この手法の妥当性を確認するうえで大いに貢献するものである。 それと同時にダイヤモンドの弾性率の温度依存性がこれまで報告されていたものよりも小さいということを解明した。これはデバイ温度が非常に高い材料の極低温物性に関する 重要な知見である。0 Kにおける物質の振動特性(格子定数、弾性率、比熱など)は量子効果によるゼロ点振動エネルギを受ける。ダイヤモンドは原子間結合力が高く、デバイ温度が高いためゼロ点振動エネルギが大きい。そして今回の研究成果では、その振動エネルギが室温付近(約300 K)まで影響しているということを解明し、ダイヤモンドの極低温物性に関して重要な知見を得た。 またシリコンは半導体や各種薄膜材料の基板として用いられていることで有名だが、可視光線に対して大きな屈折率(~5)を有する材料でもある。可視光線は吸収するが赤外繊は透過する性質を有しているため、光学部品としても用いられており、シリコンの屈折率を求めることは工学的にも価値が高い。しかし極低温における温度依存性は報告例が2件しかなく、両者は大きく異なっていた。本研究では室温から極低温域に渡り屈折率と消衰係数の温度依存性を解明することに成功した。 以上のように、本研究の最終目的である固体材料の極低温物性の解明に貢献する成果を本年度中にも得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極低温において音速と弾性率を同時に計測するために代表的な材料であるダイヤモンドとシリコンの計測に取り組んだ。その結果、屈折率の温度依存性の報告値を用いることでダイヤモンドの弾性定数の温度依存性を、弾性定数の温度依存性の報告家を用いることでシリコンの屈折率の温度依存性を計測することに成功した。これにより代表的な材料であるダイヤモンドとシリコンの弾性率と屈折率の温度依存性を得ることができたため、これを用いて今後両者の弾性定数と屈折率の温度依存性を同時に決定する準備が整った。よっておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得たダイヤモンドとシリコンの弾性定数と屈折率の温度依存性を利用しながら、まずこの二つの材料に対して両者を同時に決定することを試みる。そのために自作の低温チャンバーを作成し、光学系の改良に取り組む。そして室温において正確な値が得られることをいくつかの材料において確認し、温度依存性計測を正しく行えることをシリコンとダイヤモンドを用いて立証する。そしてAlNなど、その他の材料に対しても計測を行う計画である。
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Causes of Carryover |
予算の前倒し申請を行ったが、その請求額全てを使い切らずとも今年度の研究遂行が可能であったため来年度使用するために残りが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に物品費と出張旅費に充てて研究を遂行する。
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