2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17951
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大西 孝 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90630830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 円筒研削 / 研削抵抗 / 研削エネルギー / 工作物の熱変形挙動 / 内面研削 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象としている円筒研削における定寸装置を不要とする知能化研削システムの開発では,(1)工作物の熱変形,(2)工作物の切残し の2点を研削中にシミュレーション解析し,工作機械にフィードバックすることで定寸装置がなくとも,研削中に寸法生成量を正確に解析することを目的としている. 平成27年度は工作物熱変形量を研削中にシミュレーション解析し,その結果を加工機にフィードバックする手法の確立を行った.このシステムでは,砥石軸モータ電力から求めた研削エネルギーより工作物温度分布を研削中にリアルタイムでシミュレーション解析し,その解析結果から工作物熱変形量を瞬時に演算し,定寸ゲージの出力と足し合わせることで工作物が熱収縮した後の正味の寸法生成量を研削中に予測することができる.従来の研究では,研削エネルギーを求めるには,ひずみゲージによる研削抵抗の測定が必要であったが,ひずみゲージは設置に多大な労力を要するうえに,温度ドリフトが発生しやすく,工作機械が発するノイズの影響を受けやすいといった問題点があり,ひずみゲージを使用することなく,研削エネルギーを算出する手法を確立したことも本年度の大きな成果である.開発したシステムを用いて研削を行うことで,直径約88mmの工作物でプランジ研削を行い,工作物が十分に冷却された後の寸法生成量は,目標の寸法生成量から0.5μm以内の誤差に収まることを複数の研削条件で確認した. また,工作物の切残しを理解するために,当初計画にはなかった長尺工作物を用いた研究を開始しており,工作物の弾性変形と研削抵抗の関係を調査している. さらに内面研削においても研究に着手しており,これまでは砥石の弾性変形による形状誤差のみを考慮していたが,本年度は砥石の振れを考慮した結果,加工終了後の工作物の内面形状の推定誤差を,これまでの半分以下に改善することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では,平成27年度に切残しの研究を,平成28年度以降に工作物熱変形量のシミュレーション解析と,熱変形量をフィードバックするシステムの構築を行う予定であったが,当初予定を変更し,先に工作物熱変形量のシミュレーション解析手法と,そのフィードバック手法を開発した.開発されたシステムは,研削中の各種データをPCに取り込み,工作物熱変形量を瞬時に計算し,計算結果と定寸ゲージの出力を足し合わせることで,正味の寸法生成量,すなわち,研削されている工作物が冷却された後の寸法生成量を作業者に表示するもので,この正味の寸法生成量の演算結果に従って,工作機械は制御される.このシステムを用いて研削実験を行ったところ,先述の通り複数の研削条件で良好な成果が得られており,当初予定とは異なるものの,概ね順調に研究は進行している. また,研削中の切残し量の推定については,プランジ研削で用いている比較的剛性の高い工作物よりも,トラバース研削で用いている長尺工作物,すなわち直径に対して長さが大きく,剛性の低い工作物を用いた実験の方が,切残しを定量的に把握しやすいので,新たに長尺工作物における研削中の工作物熱変形挙動の解明を研究の一部に追加し,実験を行った.長尺工作物における弾性変形に伴う切残し量を正確に推定できれば,研削後の形状誤差を正確に推定することができ,実際に,研削実験を行ったところ,研削後の形状誤差を研削抵抗から弾性変形量を求めることで高精度に推定でき,さらに研削中の弾性変形量をコントロールすることで,形状誤差の改善が可能である点も確認できた.この結果から,本研究課題の対象であるプランジ研削においても,研削抵抗に起因する切残し量を正確に推定できることが期待される. 内面研削においても,寸法誤差の推定精度が高まり,さらに円筒研削で得られた成果を加えることで,さらなる推定精度の向上を目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
円筒研削盤における熱変形に起因する寸法誤差の抑制は,平成27年度に終了したため,平成28年度以降は主に,工作物系および砥石系の弾性変形に伴って生じる切残し量の推定に注力する.これは本来,平成27年度に予定していた研究内容であるが,先述の通り,平成28年度以降に予定していた熱変形の解析とフィードバックを先行させたため,今後,本格的に切残しの研究を行う.切残しの発生要因として考慮するべき点は(1)砥石系と工作物系の剛性(主に両者の軸剛性に起因する) (2)砥石と工作物の研削点近傍の剛性 (3) 砥石損耗である.(3)の砥石損耗については,考慮する必要があるか否かも含めて検討が必要である.また,各部の剛性が分かったとしても,変形量を算出するためには背分力(法線方向研削抵抗)を正確に測定する必要がある.そのためには,従来のひずみゲージによる研削抵抗の測定と併せて,砥石軸モータ電力からの背分力の推定も行いたいと考えている.平成27年度に電力から推定できるようになった研削抵抗は,接線方向の主分力であり,法線方向の背分力については,まだ推定技術が確立されていないので,長尺工作物のトラバース研削における実験データなども利用しながら,背分力の推定方法を調査する.さらに研削初期の工作物系の弾性変形に起因する切残しの推定についても,工作物の弾性変形が大きい工作物の方が切残しが顕著に発生するので,長尺工作物のトラバース研削を新たに研究内容に追加し,切残し量の推定に必要なデータの取得に努める. 内面研削においては,砥石損耗量や工作物に作用する研削抵抗の分布なども考慮しながら,工作物の内面形状の推定精度をより高める.さらに,研削中の研削抵抗を測定しながら,形状誤差が最小となるようなタイミングで加工を終了させる手法の開発に着手する.
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Causes of Carryover |
研究の実施順序の変更により,1年目に支出を予測していた額を大幅に下回ったため.具体的には,切残し量の研究を平成27年度に実施する予定であったが,実際は当初,平成28年度以降に実施予定であった熱変形の研究を前倒しして実施したため,既存の設備の利用が可能であったことから,平成27年度の使用額が当初予定を下回った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,平成27年度に実施予定であった切残し量に関する研究を行うため,定寸装置の購入などを検討しており,当初予定通りの支出が予測される.また,国際会議においても,長尺工作物における切残し量に関連する研究発表を行う予定であり,旅費も相当額使用する予定である.
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Research Products
(5 results)