2015 Fiscal Year Research-status Report
超低摩擦界面創成のための二硫化モリブデンナノコンポジットコーティングの設計論構築
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15K17957
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹野 貴法 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00451617)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二硫化モリブデン / ダイヤモンドライクカーボン / 移着膜 / 超低摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は超低摩擦を発現する二硫化モリブデン含有ダイヤモンドライクカーボン(以下、MD)膜の超低摩擦発現機構の解明を目的としている。2015年度はこのうち、移着膜の構造の同定及び移着物形成プロセスの明確化について研究を実施した。このために、種々のMD膜を作製し、摩擦摩耗特性を調査し、超低摩擦を発現した。さらに、超低摩擦発現時に相手材に形成される移着物について、透過型電子顕微鏡(TEM)、二次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ分光(AES)により移着膜の組織・組成について明らかにした。 以下、当該年度における研究実績を示す。 ○超低摩擦が発現した際に相手材に形成された移着物の組織について、表面近傍には二硫化モリブデンの配向層が形成されていることが分かった。また、表層から相手材表面にかけて、二硫化モリブデンの配向層を見ることはできたが、厚み方向に対して配向層はすくなくなっているように思われる。 ○超低摩擦が発現した際に相手材に形成された移着膜の組成について、移着膜にはコーティングに由来する炭素が含まれていた。また、AES分析によれば、炭素の含有量は移着膜の表層付近が最も小さく、相手材表面に対して次第に大きくなる傾向があった。 ○ボールオンディスク型摩擦試験機において、1サイクルにも満たない摩擦実験であっても既に移着膜が形成されており、その厚みは数十nm程度であり、数千サイクルの摩擦試験後もその厚みに変化は無かった。これは従来考えられている移着膜とは、形成及びその厚さを考えた際に、その特性を異とするものであり、今後、本研究で得られる様な非常に薄い移着物を移着層と呼ぶこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H27年度は予定していた研究計画以上の成果を得ることができ、一部H28年度分の研究内容についても着手することができた。 H27年度の課題である、移着膜の構造分析と形成プロセスに関しては、早い段階で超低摩擦を発現することに成功したこともあり、分析に十分な時間を割くことができたのが要因と考えられる。 そのため、H28年度の研究課題の一部についても着手することができ、こちらについても既に興味深いデータが上がってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に予定されているMoS2結晶性向上の方策については、加熱試験機を利用した実験が必須となる。加熱試験器は現在のところ大気環境仕様となっているため、より詳細に現象を把握する目的で試験器の環境を維持できるように周囲を取り囲むことで、実験室環境の影響を受け無いようなしくみづくりを6月までには実施する。
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Research Products
(4 results)