2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17973
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻 徹郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00708670)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子流体力学 / 熱泳動 / 熱電効果 / マイクロ・ナノ流体デバイス / 界面現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
それぞれ異なる温度に保たれた金属板二枚によりスペーサーを挟み込むことで,温度差を有する間隙を作製した.この間隙はおよそ0.1 mmの幅となるように調節されており,二枚の金属板には最大40 Kの温度差をつけることができる.結果として,中に封じられた試料溶液は,金属板法線方向に0.4 K/μm程度の強い温度勾配をもつことになる.試料溶液としては,水酸化ナトリウム水溶液を用いた.先行研究によると,水酸化物イオンは他のイオンに比べて高い正の熱泳動易動度を持つため,低温の金属板側に偏在すると考えられる.つまり,間隙中には高温側から低温側への内部電場が生じる(液中ゼ―ベック効果).この現象を可視化するため,溶液中で負に帯電するポリスチレン微粒子を試料溶液に添加する.温度勾配と垂直な方向からマイクロスコープによりポリスチレン粒子の運動を可視化観察することで,間接的ではあるが,溶液中のイオン偏在状態を評価できると考えられる. まず,構築した実験系の妥当性を検証するために,水酸化ナトリウムを添加しない場合を中心に実験を行った.その結果,ポリスチレン粒子は温度の低い方向へ泳動することが観察された.泳動速さが温度勾配の大きさに対して比例して増加することより,この粒子運動はポリスチレン粒子の熱泳動であると考えられる.さらに,泳動速さの定量的解析から,粒子運動が観察位置に依存しないことが確認された.つまり,間隙内には熱対流は生じていない.続いて,0.1 mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた実験を行った.この場合,ポリスチレン粒子は温度の高い方向へ泳動することが観察された.この泳動方向の反転は,水酸化ナトリウム水溶液のゼ―ベック効果であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では電流計測を行う予定であったが,電極を用いた間隙の作製が困難であったため可視化観察に切り替えた.計測手法は異なるものの,実験は順調に進んでいると言える.理論解析については進展が遅れているが,分子シミュレーション用の計算コードの開発を終え,次年度に向けた準備は整っている.
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Strategy for Future Research Activity |
間隙サイズの精密制御を可能とする実験系を構築および間隙内部の温度計測手法の確立し,定量的なデータ収集を目指す.新しい実験系の設計や蛍光試料の選定は既に行っているので,速やかに研究に着手することが可能である.数値シミュレーションと実験結果を比較しイオンとポリスチレン粒子の熱泳動易動度を算出することで,ゼ―ベック効果の検証を行う.
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